踊りで大体解決するやつ
酉島伝法先生の新作『無常商店街』は異界と交わる街を舞台にした連作。これまでの作風からやや現実に寄せてきた感じはあるんだけど、それにしたってだいぶズレていて、このリンボ的な感じというか彼岸と此岸の境目あたりをふわふわしている感じがどうにもたまらない。異界と接している3つの街の話なのだけど、表題作の無常商店街は異界との境目がわかりやすく曖昧で面白い。商店街の深部に潜るにつれて「新ラーニ果」やら「ずきも麺」やら「増減コロバス教室」といった知っているような気もするけど全く知らない単語が当たり前のように出てきて実に楽しい。挿絵がイラストレーター/漫画家のカシワイさんなのだけど、ゆるめのフワッとした絵と相まって「panpanya感があるな…」と思っていたら巻末の酉島×カシワイ対談でカシワイさんも言及されていて、なるほどと膝を打つ。2話目は数々の奇習によって異界との融合を食い止めている街の話でこれも面白い。「無常商店街」でトリックスター的な立ち位置で主人公を翻弄した黒縁メガネの男・柳井とバディを組んで活躍するのも楽しいし、山なのに海鮮が名物と謳いつつ全くありつけない展開も面白い。3本目は生前葬によってたいていの住人が「故人」になっているこれまた変な町の話。なんでこんなことになっているかという謎解きもありつつ、生者(故人)たちと幽霊たちが入り乱れ、最期は盛大な盆踊りで締めくくる。3本全部に共通しているのは、トラブルを踊りで解決していくくだりで、そういった意味ではダンスSFというくくりになるのかも。とても面白かった。
神保町の新映画館シネマリスに行ってきました
2026年12月19日に開業した神保町の新しい映画館、シネマリスに行ってきました。ここ、クラウドファンディングのときから注目していたんですが、ついにオープン。自分はサブスク会員権がちょっとお得にもらえるコースにしました。定価だと22,000円/年のサブスク会員、月あたり1,800円ちょっとでお高めの映像配信のサブスクと同じくらいのお値段。サブスク対象作品は無料で観れて、ロードショーも会員価格(1,300円)で観られるという結構お得な感じになってます。



とりあえず開業初日に賑やかしも兼ねて行ってきたんですが、場所的には神保町の駅から徒歩5分くらい、割と分かりづらい路地裏にあります。開業日なのに入口もひっそりしていて、なんだか面白い。入口を入っていくと螺旋階段があって、地下にシアターがある感じです。かなりおしゃれな感じ。
シアター内はちゃんと傾斜がついているのに感動。前の人の頭が被ってくるのが一番ストレスたまりますからね…。雰囲気的にはユーロスペースとかStrangerっぽい感じ。で、椅子がかなり質が良くてふわふわなのがまた良いです。普通に寝ました。
個人的に職場から近いのも良くて、結構来る感じになりそうです。
シネマリス一本目
シネマリスで一本目に観たのは『最初の年:民意が生んだ、社会主義アジェンデ政権』。いきなりサブスクでもないしドキュメンタリーだけど、仕事との兼ね合いで観れるのがこれしかなく…。
1970年にチリで誕生した社会主義政権の話なんですが、面白いのがこの政権が選挙によって選ばれたという点で、この映画はその選挙から1年間の激動のチリの様相を丹念に追っていったものとなります。この映画自体は1972年に公開されているらしいんですが、その後の1973年の軍事クーデター(この時にアジェンデ大統領は死亡)の際にプリントが失われてしまい、監督自身による半世紀にも及ぶ修復作業を経て2023年にリバイバル上映されることとなったという経緯があります。
このへんの歴史について予備知識がないと難しめの話ではあったんですが、1970年代にそんな物語があったということがかなり新鮮で非常に面白かったです。…が、上にも書いたんですが、椅子が心地よすぎて後半結構ウトウトしてしまいました…。記念すべき1本目なのに!
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