2巻もやばい
いま一番面白くて一番人に勧めたくないマンガNo.1こと『秘密法人デスメイカー』の第2巻。前巻もだいぶ狂ってたけど、2巻は輪をかけてイカれてる。大体見どころしかないんだけど、やはり新しいレギュラーデスメイ怪人・ベンキョーサン誕生のくだりが良いですね。人間態がまた癖に刺さりそうな感じであざとい。改造人間編がいつの間にか始まり、最初の刺客の「腸チフスの目有」がまたいいキャラなんですよね。この話はハエオムライスがやたらとかっこいいのも見どころ。まあ言ってることは狂ってんだけど。そして個人的に嬉しいのがアルミホイルジョンソン再登場。陰謀論者であることを除けばあの連中の中では一番まともなんだよなあ。再登場シーンもヒーローっぽくてかっこいい。陰謀論者だが。それにしてもこのご時世でエプスタイン島ネタをやるのもなかなかチャレンジャーというか恐れ知らずだなあ…。
21世紀に起きた奇跡
2巻が出ることがまず奇跡なのだけど、さらにこの短期間で2巻目が出るとは…。鶴田謙二先生の全裸系宇宙旅行SF『モモ艦長の秘密基地』第2巻。電力不足をどうにかしないと到着までに死!といういわゆる「冷たい方程式」ですが、荷物を放り出してもしょうがないので節電やらなんやらで全裸のモモ艦長が本社にバレないように奔走したりダラダラしたりする感じの切羽詰まってんだかゆるいんだかわからない変な読み味のSFであります。ここ最近の鶴田謙二作品はビジュアルメインというか絵の力で保たせている感じがありましたが、本作は前述のヘンテコな設定もあってか、話も滅法面白い。電力節約のために宇宙船が保証外になるスイッチを切ってしまって本人買取になる話とかめちゃくちゃ笑いました。主人公が基本ぼんくらで怠惰なのが良いですねえ。後半の怒涛の夢オチ三連発も最高。彼女の行く末が大変気になるんですが、本当に3巻目は出るんでしょうか…。3巻が出たらそれは本当に奇跡だと思います。
ものすごい密度!
日本漫画界のロシア通といえばご存知この人、速水螺旋人先生。2015年に萌えミリタリー雑誌MC☆あくしずで連載されていた『ロージナ年代記 ロシア史右往左往物語』がついに単行本化。MC☆あくしずは季刊で、さらに一回の掲載が4ページということもあって単行本が出るまでに10年かかっています。さらにとても近現代まではたどり着かず、この第1巻では6世紀からイワン雷帝が死去する16世紀まで。いつもの螺旋人先生のスタイルで書き文字がめちゃくちゃ詰め込まれていて情報密度が異常なのですが、それでもこのスピード。この先さらに歴史の密度が上がっていったらどうなってしまうのか…。それはさておき、ロシア史(ウクライナやベラルーシも含む)をバババ-っとおさらいできてしまうのは大変ありがたい。ロシア史の本は大昔にさらっと読んだだけなので、ビジュアル付きで再びなぞることができてとても良かったです。ロシアのウクライナ侵攻の遠い背景を理解するのにも役立ちそうです。2巻はまた10年後かあ…。
晩年の傑作
『スーパーの女』、新文芸坐の伊丹十三特集にて。初見。宮本信子演ずる主婦が落ち目のスーパーを立て直していく痛快ストーリー。相方はまたもや津川雅彦で、今回もちょっと情けない(が、そこがまた良い)。食品スーパーという、消費者としては毎日のように利用しているけれど、その実仕組みがよくわかっていないものの裏側がこれでもかと見せられて、これだけでもドキュメンタリー的な面白さがある。それに加えて、「この会社は何を目的とすべきか?」という今で言うMVV理論が語られているのが興味深く、「お客様を第一に考える」というバリューに沿ってすべてが決められていくのが教科書的ではあるものの非常にいい。現実にはこういうふうにきれいにはいかないのだろうけど、こういった理想論を映画の中で実践してくれるのはとても気持ちがいいものだった。後期の伊丹作品はこうした社会的視点が強くなっているのだけど、基本的にはコミカルにエンターテイメントととして描かれているので、観ているだけで非常に楽しいのも特徴的。おにぎりの質を改善しに外注先に押しかけるくだりとか、買収に抗っていこうと従業員が団結するシーン、頑固者の魚屋が時代に合わせて頑張っていこうとする場面など、見どころしかない。円熟の宮本信子の芝居がまた素晴らしい。
最後の伊丹十三
『スーパーの女』に続けて伊丹十三の遺作となった『マルタイの女』を観る。こちらも初見。今回の伊丹十三特集ではすでに観たことがあった『大病人』『静かな生活』を除いてコンプリートできた。これであとは初監督作品である『ゴムデッポウ』を観れば伊丹十三の長編作品はすべて観たことになる。どこで観れるんだろう。
さて、『マルタイの女』。主演はもちろん宮本信子で、今回は売れっ子…というよりは落ち目の女優で、殺人事件を目撃したことから「マルタイ」、すなわち身辺保護対象者として裁判まで身辺を警護されることになる。この警護する刑事役が西村雅彦(西村まさ彦)と『ミンボーの女』でも活躍した村田雄浩。西村雅彦はクレジットの企画協力に三谷幸喜の名前があることから『古畑任三郎』の今泉慎太郎をイメージしていたと思われ、コミカルな役どころ。特にクレオパトラの劇の場面では爆笑。まんま今泉慎太郎だわ。
この映画で宮本信子演ずる磯野ビワコは宗教団体から証言をしないように圧力をかけられ、愛犬が殺されるばかりか自身の命まで狙われる。一度は証言者としての役割を放り出そうとするのだが、クライマックスの大立ち回りで奮闘する西村雅彦を見て奮起し、裁判所の階段を登っていく。このラストが実にいい。いかなる理不尽な出来事があろうとも、市民としての義務を全うしようと訴えかけるこの結末は、まさに伊丹十三最後の作品に相応しい力強さと気品に満ちている。
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