ロケーションがいい

なんだか毎年恒例になりつつある劇場版の『岸辺露伴は動かない 懺悔室』。今回はヴェネツィア。原作読んだことあったけど、ほとんど忘れていたので新鮮。

「幸せの絶頂で最大の絶望がやってくる」呪をかけられた親子の話ですが、「幸せを避ける」生活様式を送る二人がなかなか面白い。父親役の井浦新の芝居がいいですね。幸運バフが付いてるので飛び降りとかロシアンルーレットとか無茶なことをちょいちょいするんですが、このへんの「能力」の副作用の使い方はいかにも荒木飛呂彦作品ぽくて楽しい。娘役の玉城ティナも存在感があって良いキャラでした。

ヴェネツィアロケということでやはりロケーションがいいんですが、運河や町並みよりも豪奢な室内が印象的でした。特に「懺悔室」の場面と最後の結婚式で使われているサン・ロッコ教会が素晴らしい。このへんは公式サイトにロケーションマップが用意されているのもいいですね。

ところで、ある種の「すり替え」がこの物語の肝の一つだと思うのですが、それで呪いを騙せるのはちょっと呪いの方がポンコツすぎじゃないですかね…?いや面白いからいいんですけど。

映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』公式サイト

ゾンビ映画じゃないけどこれはこれで良い

『28年後…』、一部で酷評されてるけど、いいじゃないですかこれ。まあゾンビ映画じゃない、という批判はそれはそう。

シンプルに家族の話であり、通過儀礼の話でもあり、そして生と死の話でもある。構造としては「行きて帰りし物語」の変形版。旅の中で生と死を感じた少年が大人になっていく話。特に驚かされたのが出産する「感染者」の話。生まれてきた赤ちゃんは感染していないらしいんだけど、そんなわけあるかい、と思いつつ、死者から新しい命が生まれてくるというのは物語全体のテーマ≒世代交代と呼応していて上手いとも思う。親しい人の死を見届けた少年スパイクが頭蓋骨を塔の頂上に据えるシーンなど、良いシーンが多く、強靭な感染者・アルファのバイタリティあふれる凶暴っぷりも素晴らしい。

ところで、明らかに続編を意識した終わり方だったけど、これあるとしたら故郷の村を襲う展開来ますよね…。

ソニー・ピクチャーズ: 映画『28年後…』オフィシャルサイト

なんだか思ったより普通。

アカデミー賞ノミネートの『かたつむりのメモワール』を観たんですが、なんというか、ちょっと期待しすぎたかな、という感じですね。普通によくできていて丁寧な作りなのですが、個人的な欲を言えばもうちょっと尖ったところが欲しかったかな、という感じです。いや、アニメーションで普通の中年女性を描くという時点で十分尖ってる感じはあるんですが、表現としては普通だったんですよね…。ストップモーション観すぎて贅沢になってきている気がします。

ストーリーとしては不遇な人生を送っていた女性が自立していくというもので、回想シーンから現在へという流れ。前半部分の回想シーンはアニメーションになることでマイルドになって観やすい感じがしますね。このあたりはアニメーションならでは、といった感じ。話自体も奇をてらったものではないんですが、キャラクターがいいですね。主人公グレースはよくいる感じの地味な中年女性なんですが、唯一の友人である謎の陽気なばあさん・ピンキーをはじめ、人には言えない秘密を抱えたグレースの恋人・ケン、グレースの生き別れの弟ギルバートの奇妙な養父母兄弟たち、どいつもこいつも癖が強くて生き生きとしていて素晴らしい。

うーん、感想を書いているうちにやっぱりいい映画だったんじゃないかなという気がしてきました。尖ったところはないけど比較的どんな人にも勧められる感じですね。

映画『かたつむりのメモワール』公式|6月27日(金)公開

「立ち読み」はいつ生まれたのか?

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小林昌樹『立ち読みの歴史』、タイトル通り「立ち読み」の歴史についての本ですが、これが抜群に面白い。そも「立ち読み」の定義とは?「立ち読み」が成立する条件とは?といったあたりから話が始まるわけですが、たしかに今でこそ開架の本屋がほとんどだけど、昔は違ったらしいんですよね。江戸時代の絵草紙屋から始まり、コミックのシュリンクの誕生までガーッと読ませてくれるのがまず楽しい。さらに現代人があたりまえのようにやっている「黙読」も実は明治期の人間にとっては「特殊能力」の類だったそうで、これもまた立ち読みの条件として挙げられているわけですね。知らなかった…。「立ち読み」という単語一つからあっという間に探索する領域が広がっていって、知的好奇心が強く刺激されること必至。『ソース焼きそばの謎』もそうだったけど、ハヤカワ新書はこういうのが本当に上手いなあ。地味だけど今年ベスト級の面白さ。

その展開は思いつかなかった

特に前情報を入れずに『罪人たち』を観てきたんですが、これはすごいですね。アメリカ南部でダンスホールを開いた兄弟の開店初日一晩の物語。前半の開店準備のシークエンスが実に丁寧に描かれていてここだけでかなり魅了されます。開店してから農場で働いているような黒人たちがやってきて賑やかなひととき。まあこのあと白人のKKKとかがやってきて焼き討ちにあうんだろうなあ…。嫌だなあ…。と思って観ていると、全く予想外のことが起こって唖然とします。ここでそれが出てくる???まあこの手の種族は白人がメインだとは思うんですが。同じように真面目な顔をして途中からジャンルものに切り替わる映画、最近だと『サブスタンス』がありましたが、あっちはノレなかったんですけど、この映画はいい感じにハマりましたね。最後の朝日のあたりのエフェクトも良かった。

罪人たち | ワーナー・ブラザース公式サイト