『主君と旅する幾つかの心得』、速水螺旋人節全開の快作
あの傑作スペースオペラ『男爵にふさわしい銀河旅行』と同じ世界観の新作。銀河帝国の藩屏にして名家の誉れ高き?メリークリスマス公爵家の息女メルガレッタ卿、その侍従であるヴィンテージ計算娘のランパチカ、カバン娘のアルクの3人組による大冒険…というか日帰りクエスト的な話ですね。このコンパクトな感じ、いかにも螺旋人先生らしくていいですね。
毎回そうなんだけど、出てくるアイデアの多様さと面白さが凄まじい。宗教惑星と大当たりの神様とカードゲームの取り合わせとか修学旅行の話とか星間戦争で熱源の捨て場にされた惑星の話とか温泉旅館ロケットの話とか、とにかくどれもこれも面白いのがすごい。特に惑星カンカンデリーの話が好きで、他の惑星の熱を撒き散らす「失害機」のデザインが宮崎駿的というか酉島伝法的というか。名前のダジャレっぽさも酉島先生っぽい。
計算娘のランパチカは螺旋人宇宙ではおなじみの登場人物で、『男爵にふさわしい銀河旅行』でもメインキャラの一人だったわけですが、新たに登場するカバン娘のアルクも実にいいキャラ。出てくる文句が遠未来感マシマシで最高。特に好きなのは「おそれイリヤのメチニコフ」ですね。語呂が良い。
超おすすめ。
妙な中毒性のあるゲーム『奇天烈相談ダイヤル』
今週は『奇天烈相談ダイヤル』をプレイしていました。テキスト版間違い探し的なゲームで、怪異の名前がわかっていれば即終了…かと思いきや絶対合ってるだろという場面でなぜか間違っていたりしてなかなか厳しい。7日間で一旦EDなんだけど、一応100個怪異を見つけるとトゥルーエンドなのかな?怪異から電話がかかってきたり、EDでリアルなNNN臨時放送が流れたり、ちょくちょく怖い演出があるのもいいですね。怪異データベースとしても面白くて、知らない怪異がどんどん出てくる。攻略方法としては知ってる怪異から類似の方に飛んでいくのがよさそうな感じでした。一応クリアしてるけど、ちょくちょくやっていきたいゲーム。音楽も抜群に良い。
菅田将暉がかわいそうな映画『Cloud』
黒沢清の新作が2本も観れるとは今年はなんていい年だ。
菅田将暉演ずる転売屋が主人公で、冒頭からかなりカスな言動が目立つのでまあひどい目にあうんだろうなあ、という予測は立つんですが、後半に行くに従って思いの外ひどい目にあい始めるので、「おいおいおい、さすがにそれはないわ」となっていくのが面白いポイント。黒沢清作品の一つのテーマとして「理不尽さ」というものがあるかと思うのですが、ここでは「カスの転売屋だしやーないかな…」と思わせておいて、それ以上の理不尽をぶつけてくるのがいい。特に居留守を使っただけの相手に殺されそうになるというのが絶妙。それだけのことで?と思わざるを得ないんだけど、様々な要因が重なってそういった結果になっていくというのがいかにも黒沢映画らしい。で、ここでの荒川良々演ずる工場の上司の芝居も素晴らしいんですよね。最後までやり合ってるから実質メインヴィランみたいな扱いだし。荒川良々も年を取ってますますいい役者になっていくなあ。で、この映画の最大の見所は菅田将暉の演技ですよ。カスの転売屋だからそれは当然嫌なやつなんだけど、そこにとどまらないそこはかとなく人を見下している感じ。これが上手すぎる。不条理ものであはるんだけど、このせいで、最終的にはまあしゃあないかな、という気分になってくる。手のひらの上で転がされている感。
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