はじめに

今年はそこそこ本数観れましたので、前々から気になっていた「話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選」に参加したいと思います。

この企画は「aninado」さんが主催しているイベントで、レギュレーションは以下のとおりです。

■「話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選」ルール
・2022年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2022年中に公開されたものとします。

ツイッターのハッシュタグは「#TVアニメ話数10選2022」となります。

というわけで10選です

『ぼっち・ざ・ろっく!』#12「君に朝が降る」

最終回なのにこのテンションの低さ!これだけで個人的には100点。

普通に考えたらAパートとBパートまるまる使って学園祭ライブめちゃくちゃ盛り上げてCパートで打ち上げやって締めると思うんですが、ライブがAパートだけでしかも全然盛り上がらないという意外性。弦が切れてとっさに「おにころ」のボトルでリカバーするような展開はあるんだけど、ぼっちちゃんは常に俯いてるし、3人との距離がレイアウト上でも示されてるし、挙げ句の果てにスベッて病院送りになるという不完全燃焼さ。

そしてBパートでいつもの日常パートを経て、「今日もバイトかあ…」の独白で締めるという。この尖った構成はかなり胆力がないとできないですよ。ぼっちちゃんの成長よりも、「続いていく日常」を強調したような展開と演出が個人的にかなり刺さりました。

アジカンカバーについては…「すげー!サプライズ!」と思いつつ、アジカンファンとしての自分は「いや、微妙だろ…。」というアンビバレントな感情を抱いています…(どちらかというと肯定派)。

『平家物語』第七話「清盛、死す」

このシリーズ全体的にクオリティが高すぎるので選びづらいし、順当に行けば第十一話「諸行無常」なんですが、物語の一つの転換点であるこの話を。

高倉天皇、平清盛と重要人物がバタバタと死んでいくのだけど、どちらも葬儀(的な)シーンを1カットで済ませるという割り切り。まあこの作品、時間軸が長いからそういうシーン多いんですけど。

清盛、かなり好きなキャラなので、最後にさまざまな表情を見れるのがいいですね。熱病でうなされるシーンの凄惨さとコミカルさも面白い。

ポイントとしては、本作のもう一人の主人公である徳子の変化でしょうか。自分をさらなる政争の具としようとする父・清盛への断固とした拒絶。正面から映したカットの美しさが印象的です。最後に語る「望まぬ運命が不幸とは限りませぬ」もとても心に残り、やはりこの物語は徳子の物語だということが伝わってきます。

もう一つのポイントは、本作のオリジナルキャラクター、語り部としての「びわ」と重盛の3人の息子との別れのシーン。やんちゃな風貌と裏腹にかなりの常識人である次男の資盛が、びわに「お前もう出てけよ」と告げる場面ですが、ここでのレイアウトとキャラクターの芝居が実に良いのですね。特に資盛の表情を映さないカメラワークとびわの柔和な表情。

ところで、この文章を書くために最後まで見返したのですが、本作は「資盛生存ルート」なんですね。資盛かなり推しなので地味に嬉しかったです。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第7話「シャル・ウィ・ガンダム?」

モビルスーツ戦ない方が面白い本作(個人の感想です)ですが、この話はストーリーと演出の巧みさが傑出していた印象です。

ペイル・テクノロジーズのイカれたプレゼン。「そうはならんやろ」と思いつつ、でもあの4人ならやりそうだな、という絶妙な雰囲気が上手い。

ピンチに駆けつける花婿とその失敗、その後のダブスタクソ親父に頭を下げにいく展開の驚き。自立しようとする女性を描きつつ、立ち塞がる現実と妥協というあたりのバランス感覚が非常に現代的だと感じました。『美味しんぼ』2.0感。

で、最後のママの「ガンダムだったの〜」に爆笑。

『ヤマノススメ Next Summit』#12「行こう!新しい頂きへ」

4期最終話にして2期新十一合目ぶり、(現実時間で)8年越しの富士山リベンジ!これで盛り上がらないわけはないでしょう。

それもただ淡々と登頂成功を描くだけではなく、再びの高山病から前回と同じような展開を辿りつつ、今回はひなたが残るという変化や、ひなたが置いてきた羊羹をあおいが出したりといったファンサービスがすごい。個人的に笑ったのは前回の失敗の遠因になった外国人登山カップルの出番がかなり多かったところですね。ワンカットくらいは出るような気もしてたけど写真も撮るんかーい、という。

絵的にも見どころが多く、あおいとひなたが食事後に休んでいるカットや登頂に成功したあおいの正面からのカット、ご来光の場面などが素晴らしかったです。登頂の際の雄大な音楽も素晴らしく、4期を締めくるにふさわしいエピソードだったと思います。

そしてEDが「スタッカート・デイズ」だったのでもう無理でした…。これはずるいでしょ。

『モブサイコ100Ⅲ』#08「通信中② 〜未知との遭遇〜」

シリーズを締めくくる#12「告白〜これから〜」も師匠のかっこよさとか芝居の巧みさとか異常な作画レベルとかで選びたかったんですが、ここはあえて箸休めのようなこちらのエピソードで。

モブサイコはシリーズを通して作画の良さが際立っていましたが、この幕間のような話でも手を抜いていなくて、むしろ日常芝居が際立ってます。具体的に良かったのはAパートの山に向かう車内での脳感電波部+師匠のやりとりの芝居ですね。特にトメさんの芝居が印象的。というかこのエピソードを通してトメさんが主人公なので異常にかわいいです。

お話的にも今までだらけた暇つぶし部だった脳感電波部が最後の最後に一体になるという点も熱いですし、それを大人として見守る霊幻師匠の見せ場もあり、かなり見応えがあります。

で、問題はCパートの「犬川日記」ですよ。おまけ程度かと思ったらがっつり犬川の異星生活が繰り広げられ、まるで別のアニメが始まったかのかと。BONSEつながりで『スペース☆ダンディ』を思い出しました。

『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』すてっぷ⑦「DIYって、ぢめぢめしてたら・いえで・やればいいね」

この作品もシリーズ通して安定した作画で、ストーリー的にもそれほど起伏がないからどの話を選ぶか迷ったんですが、コンセプトであるDIYの味が一番出てると思ったこの話を推したいと思います。

梅雨シーズン、エアコンがない部室を脱出して部長の家で作業をするという話ですが、部長の部屋の意外な雰囲気や手作りクッキー、オタク特有の早口のくだりでキャラクターの掘り下げがされていくのがいいですね。

そして、部長の部屋+ウッドデッキで各々作業をしていくパートがとてもこの作品らしさに溢れていて。しーちゃんとジョブ子の手際が良すぎて、見ていてめちゃくちゃ気持ちいいんですよね。屋内組のアクセサリー作りもUVレジンってそういうふうに使うんだ〜という新鮮な驚きがあり…。Youtubeでなにか作る系の動画見てる人の気持ちがわかります。

せるふは相変わらず不器用なんですが、それぞれ自分のペースでやっていくというあたりが、この後のツリーハウスづくりと対照的で、DIYというアクティビティの懐の広さのようなものが表現されているような気がします。

『アキバ冥途戦争』第8話「鮮血に染まる白球 栄光は君に輝キュン♡」

全編通して狂ったエピソードしかないので、これも選ぶのが難しかったんですが、せっかく野球回やってくれるんだから選ばないわけにはいかないですよね。『ダイナマイトどんどん』回。

試合開幕早々いきなり形見の赤バットがブチ折れるシーンでまず爆笑。なごみのうざさがマシマシになってるのも爆笑。一本足打法が出て「王!」の声が入るところとか、なごみが自分で三振して自分で「ドンマイドンマイ」とか言ってるところとか、ゆめちの右ストレートとか、謎のハーモニーとか死んでるのに死んでないとか言い張るとことか、謎の店歌とか、まあ最初から最後までネタ盛りすぎでずっと笑えるのがすごいところ。まあ他の話も同じような感じですが。

ところで個人的にこのアニメで一番推してるの店長なんですが、この話でも冒頭の葬儀シーンで煽りまくったり、乱闘で元気になったりと八面六臂の大活躍。店長役の高垣彩陽さん、ハマり役すぎでしょ。

『チェンソーマン』エピソード.08「銃声」

一つの見どころはアバンの泥酔した姫野先輩がデンジを家に連れ込むシーン。鍵を開けるところから、人体の重量感、泥酔した人間が壁にぶつかりがちな芝居、靴を玄関に放り投げるカット。かなり完璧で、大袈裟に言ってしまうと、このアニメーションシリーズが目指している一つの到達点のように感じました。ぬるぬる動く作画は正直あまり好きではないのですが、このアニメのコンセプトにはめちゃくちゃ合ってるのでヨシ!

もう一つはやはり後半の4課襲撃シーン。原作も映画を意識しているテイストでしたが、映像になると映えますね。日常空間が無音になって非日常空間に転移していく演出自体はよくあると思うんですが、この作品では一味違ったハマり方をしていた気がします。こういう演出って物語の端緒となるか、主人公の活躍が前提という印象があるのですが、マジで全滅(に近くなる)というのは原作を読んだ時からかなり衝撃的でした。マキマさんも(見た目上)死ぬし。それにしてもサムライソードがしょうもない小話を始めないで他のヒットマンと同じように先生不意打ちしてたら後の展開全然違ったんじゃないかなあ。いや、ラーメン屋のシーンかなり好きなんですけど。

で、ラストに姫野先輩退場という…。この「死なないだろうな〜と思ってたやつが死ぬ」展開は藤本タツキ作品定番ですが、やはりこうも魅力的なキャラクターをあっさり退場させてしまうのはすごいと思います。割り切り方!このシーンも情緒があっていいんですよね。

全体的に作画・演出が超ハイレベルな回だったと思います。でもだいたいこのレベルで揃えてきてるんだよなあ…。異常。

『ユーレイデコ』#7「人でなしの屋台」

#5の「うそつき鵺を追って」と迷ったのですが、ラーメン回なのでこちらを。

特に活躍シーンもなかった謎の着ぐるみおじさん(?)ワトソンとベリィが誰も場所を知らない幻のラーメン屋を探すという都市伝説もののフォーマットを纏ったエピソードですが、口伝や噂というものの本質に迫ろうとするテーマが魅力的です。「友達の友達の言っていたことが嘘」といった都市伝説につきものの展開がありつつ、明らかに動きづらそうな巨大猫ヘッドのワトソンが機敏に動き回るのが楽しい。

ついに見つけ出したラーメン屋台を営む謎のロボット・アナリティカさんのデザインと彼との問答もおもしろく、外見のインパクトと明らかにキャラじゃない「アイヨッ!」の掛け声のインパクトが強すぎる印象深いキャラクターです。物語上でもさりげなく重要な役目でしたし。ラーメンの作画も良し。

『スペース☆ダンディ』のラーメン回(第2話「幻の宇宙ラーメンを探すじゃんよ」)を思い出したり。

『よふかしのうた』第1夜「ナイトフライト」

やはり「夜」のビジュアルのインパクトに尽きます。これ見てからあまりにも面白かったので原作買いに走ったのですが、原作では別にこんなビジュアルじゃないんですよね。あまりにも煌びやかでビビットな色彩の生み出す非日常的イメージは、「夜」こそがこの作品の主人公であることを示すと同時に、主人公であるコウの心象風景とも受け取れる、実に魅力的でアニメーションならではの表現だと感じました。

もちろん、この夜のイメージはシリーズを通じて共通しているのですが、やはり初見の時のインパクトの大きさから第1夜を選びたいと思います。

この物語は典型的なボーイ・ミーツ・ガールなわけですが、第1夜で続け様に描かれる二人の非対称性の演出にも惹かれます。一つは自販機で酒を買おうとするコウとそれを咎めるナズナのファーストコンタクトのシーン。そしてもう一つはナズナが人ならざるものであることがわかるラストの吸血シーン。どちらも魅力的なシーンですが、特に吸血の場面は艶やかな口元の描き方など、作画的にも見応えがあり、この先どうなるのか、という視聴意欲を掻き立ててくれる名シーンだったと思います。