おひるねラジーズ

毎日を、楽しく生きる


【映画レビュー】『嘘八百』:脚本以外はいいんじゃない?【あまりネタバレなし】

      2018/01/28


■あらすじとキャストはいい

 あまり映画で外れ引くことって無いんだけど、新年早々ワースト候補を引いてしまうの巻。というよりオールタイムワースト級なんですけど。いや、あらすじ読む限りだと面白そうだし、予告編もワクワクさせてくれるんですよ。陶芸を扱った贋作クライムもの自体珍しいというのもあるし。

 強欲な美術商に騙されて店を潰した落ち目の古物商と、同じく騙されて贋作作りに使われたかつての天才陶芸家。ひょんなことから出会った二人が、幻の利休の茶碗をでっち上げ、驕り高ぶる悪徳美術商と悪徳鑑定士に復讐する!これだけだと面白そうなんだけど…。

 キャストとキャラクターもね、本当に良いんです。主演の古物商・則夫役は中井貴一。相棒のインチキ陶芸家・佐輔は佐々木蔵之介が演ずる。いわゆるバディもの(アクションはないけど)という面もあって、この二人の会話を聞いているだけでそれなりに楽しい。小池の娘・いまり役に森川葵、野田の息子・誠治役に前野朋哉。特に森川葵が可愛すぎてヤバイ。バームクーヘン貪り食ってるシーンとか。そして小池と野田のコンビを支える贋作集団。一見ただの居酒屋店主にして達筆の西田(木下ほうか)、紙の神・よっちゃん(坂田利夫)、自由自在に箱を作る材木屋(宇野祥平)。塚地武雅が演ずる博物館学芸員も、あーこういう人展覧会とか行くといるわ〜という美術館あるあるだし、悪徳鑑定士・棚橋(近藤正臣)なんてまんま「例のあの人」で思わず笑ってしまう。

■これほんとに『百円の恋』書いた人の脚本なんですか…

 問題は、この魅力的なキャラクターたちが全く絡み合っていないという点。本筋の痛快贋作詐欺復讐劇はいいんだけど、そこにゴテゴテと余計なものがくっついていて、さらに何の説明もないという。特にひどいのが則夫といまり、佐輔と誠治という2つの親子関係を描いた部分で…というかこの部分がほとんど全く描かれてない…。序盤こそ家族間の関係がうっすらと描かれるのだけど、則夫と佐輔が贋作づくりに邁進していくあたりから忘れられたかのように画面に登場しなくなるのである。則夫は佐輔の家に泊まり込んでつかの間の共同生活を始めるのだけど、なぜか子どもたちは全く出てこない。まあ子どもっていう年じゃないと言えばそうだし、おっさん二人のどこかホモセクシャル的な生活を描く上では邪魔だったとは思うのだけど、だったらラストの展開はおかしいでしょ…。そして、「絶対これ伏線だろ」と思ってた誠治のミニチュアづくり。「あー、このスキルが後半のピンチで活かされて親子の和解に繋がるのね!ベタだけど好きだぜ!」と身構えてたら全く何の意味もないのである!最後に意味ありげにアップになるくせに…。

 居酒屋「土竜」に集う贋作職人たちも、たしかにキャラクターは立っていて面白いんだけど、本物の箱と譲り状が揃っていて、さあ後は肝心の茶碗があれば、というストーリー展開で登場する必然性ってあります?一応作中ではそれっぽい説明(箱と譲り状も贋作にしとけば使いまわせるじゃん!)があるんですけど、こんな大博打を何回も打てるんすか…それよりも初回での成功確率高めたほうが良いんじゃないですか…と素人ながら心配になってしまう。だってバレたら即死なんだぜ?よくそんな余裕あるよな~。実際、西田さん、本物のまんま書けばいいところを余計なもん付け加えてピンチになってるし。好意的な見方をすると、このあたりのトラブルを物語上の起伏とみなすこともできるし、実際面白くはあるのだけれど、そもそもこいつらいらねえよなという気持ちで観ているので、どこか空々しく感じてしまう。

 さて、無事に悪徳美術商を騙しおおせて大団円。と思いきや、それまでほぼ放置されてたのに、なぜか唐突にいまりと誠治の結婚式が始まるのである…。え、たしかに二人が惹かれ合う描写はあったけど、この展開はあまりにも唐突すぎるでしょ…。さらにその後のオチがまたひどくて…。制作者的には「騙したやつが騙されてどんでん返し!ドヤ!」的なやつを狙ってたと思うんですよね。確かにそういう展開は好きですけど。でも何の伏線も貼らないでこのオチはないでしょ…。父親たちが家庭を顧みないキャラというのは伝わってきたし、居酒屋の面白おじさんたちのエピソードを切り捨てて、親子の関係、そして若い二人の交流が描かれていれば説得力があったんだけど…。取捨選択に失敗した映画ですねこれは。

■美術品の価値とは

 まあ文句ばっかり言うのもアレなので良いところも挙げておきましょう。まずは物語中盤での作陶のシーン。過去に囚われた二人の中年が迷いを捨て、物語の転換点ともなる重要なシーンですが、一心に土を捏ね、窯をあたため、作品を作り出していく場面は圧巻。しかも出来が悪いものはどんどん潰していく。陶芸と言えばろくろだと思うんだけど、茶碗なので手で整形していくのも面白い。こういう場面って意外と映画とかでは観たことがなかったこともあり。

 そして、もう一点が美術品の価値を「物語」にもとめているというところ。「箱書きと譲り状は本物で中身の茶碗のに贋作を作る」という展開からもわかるように、茶碗・箱・譲り状も3点が揃って初めて莫大な価値が生じるんですよね。言ってみれば、この物語における美術品=茶碗は添え物、あるいは「利休が処刑される直前に作成した」という物語を完成させるための構成要素にすぎないわけです。陶芸というジャンルを選んだこともそうだけど、映画で扱われる美術品って価値がわかりやすい(というのは幻想でそれもまた「物語」に規定されているわけだけど)ものが選ばれがちだと思うんだけど、そういった意味では意欲的なアプローチだったと言ってもいい。

 とはいえ、そういった点を差し引いても脚本のチグハグさが目についてしかたがない。ワースト映画という言葉を使うことには抵抗があるけれど…あるけれど…これは暫定ワースト映画2018!!

予告編

基本情報

嘘八百  105 min

監督:武正晴

脚本:足立紳/今井雅子

撮影:西村博光

出演:中井貴一/佐々木蔵之介/友近/森川葵/前野朋哉/堀内敬子/坂田利夫/木下ほうか/塚地武雅/桂雀々/寺田農/芦屋小雁/近藤正臣

公式サイトhttp://gaga.ne.jp/uso800/

 - 映画レビュー

関連コンテンツとスポンサードリンク