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レイバーのいない世界の物語
【映画レビュー】『THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章』

      2017/09/11


 なにごとも、とりあえず否定から入る奴はまずクソだし嫌われるんだけど、この作品で押井守はいつものようにそれをやってのけている。「やってのけている」というよりはコレはもう彼の「業の深さ」が成せるわざだよね。本作の制作発表時に「監督、押井かあ…」と思った人はやっぱりその不安が的中したわけだし、「監督!押井守!これは期待www」と思った人はやっぱりその期待通りの作品になっているという次第。

 まあ、要するに一言で言ってしまえば、コレはパトレイバーなのだけれど、それ以前に「押井守の映画」なのだ。

 多少ネタバレになってしまうのだけど、なにしろ本編に先立つ「エピソード0」の中でシバシゲオ(千葉繁)を通じて、「二足歩行ロボットなんて非実用的なフェチズムの産物だ!」と切って捨てているのだから、これからの展開がわかろうというもの。予告編とポスターはほとんど詐欺に近く、レイバーが活躍する(というより動く)シーンはほぼ皆無。思えば『劇場版2』で特車二課不在の物語を描いた押井守らしい映画ではある。

 では、何が描かれているかといえば、端的に言ってしまえばダラダラした特車二課第二小隊の日常である。ちなみに物語に先立ち第一小隊は解体されている。

 エピソード0の中でも繰り返し言われているように、この世界(2013年)はレイバーという存在が否定された世界である。そのため、98式AV(イングラム)が出動する機会もほとんどない。押井守が描きたいのはレイバー同士の格闘戦でも、手に汗握る近未来警察サスペンスでもなくて、「レイバーのある世界での日常」なのだ。だから、彼は第二小隊のある埋立地を舞台にして、普通の映画だったら「クソいらねえシーン」と言われそうな「正しい整備員の歌」とか、上海亭のオヤジとのやりとりとか、それに続くオヤジのチャーハンを作るシーン(歌付き)とか、買い出しのシーンとかにあれだけの尺と技術と情熱を注ぎ込んでいるのである。

 繰り返すけれども、これは「レイバーが添え物になってしまった世界の物語」である。それだからこそ、エピソード0でレイバーをさんざんこき下ろした後の「俺だって好きだよ!」というシバシゲオの慟哭は押井守本人の言葉として聞く必要があるだろうし、とても胸を打つのだ。

 あ、あと泉野明(「いずみのあ」ではない)役の真野恵里菜がありえないほどカワイイのでそれだけで見る価値はあると思います!

予告編

基本情報

THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章  58 min

監督:押井守

音楽:川井憲次

脚本:押井守

出演:真野恵里菜/福士誠治/太田莉菜/堀本能礼/田尻茂一/しおつかこうへい/筧利夫/千葉繁

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