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【映画批評】『皆はこう呼んだ 鋼鉄ジーグ』:チンピラヒーローVSチンピラYouTuber!【ネタバレなし】

      2017/09/19


あらすじ

 舞台は相次ぐテロ事件に揺れるローマ。コスい窃盗で食いつなぐチンピラ野郎のエンツィオ(クラウディオ・サンタマリア)はひょんなことから鋼鉄の身体と強力な身体能力を手に入れる。死んだチンピラ仲間のセルジョ(ステファノ・アンブロジ)の娘アレッシア(イレニア・パストレッリ)を成り行きで助けたことから、エンツォはマフィアの手下(チンピラ)であるジンガロ(ルカ・マリネッリ)に狙われる羽目に…。果たしてエンツォはアレッシアを守りヒーローとなることができるのか。

ゴロツキ系ヒーロー?爆誕!!

 ヒーローと悪役の間にあるものはなんなんだろう。そんなことをたまに考える。この映画はただのチンピラだった主人公がヒーローとして走り出すまでを描いた物語だ。

 主人公エンツォは警察に追われる中で、河の中に不法投棄されていた放射性物質によって強靭な肉体を手に入れる(このあたりカウフマンの『悪魔の毒々モンスター』を彷彿とさせる)。で、最初にやるのがATM強盗。まあこれはわかる。このエンツォってやつは友達もいないし、まともな仕事もする気がないすごくダメな人間なので、そりゃ銀行強盗とかよりも一人でできるATM強盗だよなって。でも、その大金で買うのが大量のヨーグルトとAVってのが、すごく等身大というか人間臭いのである。ちなみに冷蔵庫にはヨーグルトしか詰まっていないのである。

 このダメ人間がいかにして人々のために力を振るうようになるのかが物語の骨子であり、そこで媒介として現れてくるのがヒロインのアレッシア。幼いころに母を亡くしたせいで、まだ少女とも言える幼さを残している彼女が心奪われているのがタイトルにもある日本アニメ『鋼鉄ジーグ』なのである。憧れのヒーローにエンツィオを重ね合わせていくアレッシア。一方で彼女の出現によって孤独を癒やしていくエンツォ。ハグレもの同士が心通わせていくという展開はある種の物語に典型的な流れだが、この映画がヒーロー物であることを考えるとややチグハグした印象を垣間見せる。

ジンガロはYoutuberの夢を見る

 そして、エンツィオと対になるように置かれているジンガロも魅力的な悪役だ。かつてはテレビのオーディション番組に出たこともある彼もまた、エンツィオと同じように社会の周縁に身を落としている。しかし、エンツィオが人から距離を置いていこうとしているのに対し、ジンガロは人を支配し、認められたいという欲求で動いている。ATM強盗を働くエンツィオが「スーパークリミナル」として動画サイトで祭り上げられたことに激怒するジンガロ。要するに彼はYoutuberになりたいのだ。その姿勢は物語の終わりまで変わらない。結局、彼もまたエンツィオと同じスーパーパワーを手に入れるのだが、それを使って真っ先にやるのが皆殺しライブ中継だったりするのがとにかく面白い。このあたり「インスタ映え」を優先して食事を無駄にするような現代人特有の病が反映されていると言えなくもないだろう。エンツィオもジンガロもそういった意味では庶民感覚の等身大キャラクターなのだけど、ジンガロに関して言えば、世界征服なんかを目指さずに徹頭徹尾「小物」であるという一貫性がいっそ気持ち良いのだ。このご近所感。

そしてヒーローになる

 この映画のモティーフの一つになっている永井豪原作によるアニメ『鋼鉄ジーグ』は1975年の放映。ジーグの頭部ユニットに変形する司馬宙はサイボーグであり、社会人生活とのいわゆるワークライフバランスに悩む姿が印象的だった。この映画に置ける2人の異形者、つまりエンツィオとジンガロに目を据えるなら、この映画は、伝統的なヒーローと、承認欲求という現代的な病に取り憑かれた者との戦いと捉えることもできるだろう。

 アレッシアを守るという目的から、市井の人々を救うことに、ヒーローとして目覚める場面は、ベタな展開だがやはり熱い。そして、人々の賞賛などどこ吹く風で彼はジンガロとの対決に向かうのだ。物語の最後、彼はアレッシアの編んだジーグのマスクをかぶり夜の街へと消えていく。ヒーローとは孤独で人知れず活躍し、Youtubeに自分の勇姿をアップすることなんてしない。古臭いと言われようが、それがアレッシアの憧れたヒーローだったのだから。

予告編

基本情報

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ  Lo chiamavano Jeeg Robot119 min

監督:ガブリエーレ・マイネッティ

音楽:ガブリエーレ・マイネッティ

脚本:二コラ・グアッリャノーネ

撮影:ミケーレ・ダッタナージオ

出演:クラウディオ・サンタマリア/イレニア・パストレッリ/ルカ・マリネッリ/ステファノ・アンブロジ/マウリツィオ・テゼイ/フランチェスコ・フォルミケッティ/ダニエーレ・トロンベッティ/アントニア・トルッポ/サルボ・エスポジト/ジャンルカ・ディ・ジェンナー

公式サイトhttp://www.zaziefilms.com/jeegmovie/

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