【レポート/レビュー】記録映画『飄々~拝啓、大塚康生様~』&大地丙太郎監督トークショー【TAAF2015】

 今年で2回目の開催となる「東京アニメアワードフェスティバル」(TAAF)に行ってきました!

リンク 東京アニメアワードフェスティバル2015

 初日の19日(金)は「トムスアニメ制作50周年記念シアター」へ。トムス・エンターテインメントは、株式会社東京ムービーとして1964年に創立された老舗プロダクションで、代表作は『ビッグX』、『ルパン三世』シリーズ、『ど根性ガエル』あたりが有名でしょうか。最近だと『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』も良かったですね!

 今回のイベントでは、70年台のトムス・エンタテインメントを支えた作画監督・大塚康生さんを回顧する記録映画『飄々~拝啓、大塚康生様~』の上映と、現在、『神様はじめました◎』の監督をされている大地丙太郎監督がトムス・エンタテインメントに纏わる思い出を語るトークショーが行われました。

リンク トムスアニメ制作50周年記念シアター|TAAF2015

 それにしてもあれですね、この同じ時間に『ヒックとドラゴン2』『Song of the Sea』を被せてくるのはさすがに厳しかったですね。幸い、どちらも早々にダメだったのでこころおきなくこちらのプログラムを観れたわけですけど(笑)

記録映画『飄々~拝啓、大塚康生様~』

 御年83歳になる伝説的なアニメーター・大塚康生さんをめぐる人々のインタビュー。もちろん、大塚さん本人も出ていますけど、大塚さんとともに働き、教えを受けた大御所たちの話が面白いドキュメンタリーです。

 キャスト(と言っていいのか)は高畑勲監督、小田部羊一さん、月岡貞夫さん、おおすみ正秋さん、友永和秀さん、田中敦子さん、富沢信雄さん、道簱義宣さん、林雅子さん。お名前はよく聞く方々も多いですが、お顔を拝見する機会もそうそうないので、貴重な映像でした。つい先日、日大芸術学部を退官された月岡先生、ダンディだなあ、なんて思ったりも。

 時間軸は終戦直後から1989年の『リトル・ニモ』まで、実に40年以上のタイムスパン。東映動画への入社から始まり、東映長編映画(『白蛇伝』『わんぱく王子の大蛇退治』)、そして大塚さんが初めての作画監督をつとめた『太陽の王子ホルスの大冒険』(1968年)。『ルパン三世』(1st)『ルパン三世カリオストロの城』(1979年)『じゃりン子チエ』(1981年)などなど…。東映の頃は労働組合の書記として毎朝ガリ版で新聞を刷っていたとか、トムスの研修生が家に来て押し入れを開けると大量のアメリカの武器のカタログなどが雪崩の如く溢れてきたとか、文字の上では知っているエピソードでも当事者の方々が話すと臨場感が違いますね。おおすみ正秋さんが『ムーミン』に誘われた際に、大塚さんの顔がムーミンの顔に変化していくアニメーションを即興で描かれて感動した話しなんかは、アニメーターとしての大塚康生らしさが色濃く出ていますし、富沢信雄さんが語る『リトル・ニモ』後にスランプのような状態になり、年下の作監からリテイク出されるといった哀愁ただよう話もありました。でも、誰もが一様に言っているのが、大塚さんという人の人となりで、例えば『ルパン三世カリオストロの城』の例だと、宮﨑駿監督から叱責されてリテイクを出されても、キチンとオーダーをこなすエピソードが語られます。この点、痛快(?)なのが、高畑勲監督が宮﨑駿監督と比較しているインタビューで、まあご想像のとおりです(笑)

 ところで、この映画、各種映画データベース等を検索しても全く引っかからないのですが、もしかして公開されない類の映像だったのでしょうか。見る人が見ればとてもおもしろいドキュメンタリーなので、どこかでまた見る機会があるといいですねー。映画的に見ると、一昨年公開された砂田麻美監督の『夢と狂気の王国』のようなテイストでしたね。カメラワークとか照明の感じとか。スタジオジブリも出ますし。『夢と狂気の王国』と二本立てだと面白いかな、と思いました。エンドロールで出た監督のお名前を失念してしまったのですが、語りは島本須美さんでした。

 あ、あと大塚さん自身のインタビューの終わり方がお茶目で最高でしたね。本当にラーメン食べてるし。あとエンドロールでルパンとのマネ(1stシリーズ第11話「7番目の橋が落ちるとき」)をして口でワルサーP38のモデルガンのスライドを引こうとして結局できなかったり。

基本情報

『飄々~拝啓、大塚康生様~』(70分)出演:大塚康生、高畑勲、小田部羊一、月岡貞夫、おおすみ正秋、友永和秀、田中敦子、富沢信雄 ほか

大地丙太郎監督特別講演「私のなかの東京ムービー」

手書きでメモったのですが、あまりちゃんととれていないので箇条書きです(^_^;) 事実誤認等ありましたら、ご連絡ください。

大塚さんとの思い出

■『未来少年コナン』(1978年)のギガントの上をコナンが走るカット、風圧で走る軌道を変えるのがすごい!

■「杉並アニメ物語」(http://homepage3.nifty.com/yuyu/animestory/)のイベントに行ったら控室に大塚さんがいて、「ああ、大地くんね」と声をかけてくれたんですね。覚えていてくれたことに感動!

■その時に『W3』(1965年)のオープニング原画をやることになった経緯を聞ききまして。なんでも手塚先生のお弟子さんの車をぶつけてつぶしてしまい、謝りに行ったらちょうど虫プロの制作会議中で…。その場で手塚先生がオープニングのふりをしてくれたとか…。

記憶の中のトムス・エンタテインメント(東京ムービー)

■実は通っていた中学校のすぐ側に東京ムービーの社屋があって、学校の帰りに会社の周りをウロウロしたりしてました。セルが捨ててあって、『パーマン』とか『オバQ』があったんですけど、ちゃんと白黒が塗ってあるのに感動しましたね。拾ってこなかったのが残念!

■中学の時の文化祭では先生がアニメ好きということを覚えていてくれて、「東京ムービーに取材に行って来い」と言ってくれたので取材に行ってきました。アポは多分先生がとってくれたんですかねー。1階が撮影で2階か3階が美術でした。セルの所はどこにあったかあまり覚えていないんですけど。当時、2つ疑問があって(キャラクターがこちらがわから山を登ってくる場面と撮影の際にピントをどうやって合わせているのか)聞いてみたんですけど、結局業界入るまで理解できませんでした(笑)

トムスの中で影響を受けた作品

■「我が人生はトムスアニメとともに」

■No1は『ガンバの冒険』(1975年)。音楽の使い方がスゴイ。ネズミなのにドラマチック!

■『ルパン三世』(1st)。大塚さんが好きなので…。

■『ど根性ガエル』(1972年)。背景が阿佐ヶ谷で、阿佐ヶ谷が好きなので…。元気の良さとか庶民パワーとか、バイタリティのあるものが好きですね。

アニメ業界内でのトムスの個性

■今の社屋の会議室に「マダ・ナイ・コトヲ」の年表版があります!

現代のトムスとは

■トムスを見て育ったけど、自分が携わったのは『神様はじめました』が初めてでした。

■つい一昨日、『神様はじめました◎』の最終話が上がったんですけど、ちょうど撮影監督の佐々木(明美)さんが誕生日で、ケーキを準備したり、カットが上がってから効果が付くまでしばらく時間があるんですけど、その時間に近くの飲み屋でアルコール入れたり…、うちのチームだけかもしれませんけど、あたたかみのある会社だと思いますね。

まとめ!

 記録映画も特別講演も貴重なエピソードを知ることができて有意義なイベントでした。

 今回はトムス・エンタテインメント50周年記念ということだったわけですけれども、そういう記録ってとても重要だと思うんですよね。TVアニメはまだ半世紀ですけれど、かつて、第一線で活躍されていた人々の記憶を掘り起こしていくのはここが正念場なのかもしれません。大塚さんも映像の中では矍鑠とされていましたけど、もう80歳を超えているわけですし。そういった意味で、今回の『クリエイターズファイル』のような記録映像はどんどん作っていくべきだと思います。

 そういえば、いらっしゃってるのは業界の方が多いような気がしましたね。アニメ様とかデータ原口さんとか氷川さんとか…。

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1件のコメント

  1. 飄々の監督は宇城秀紀さんです。
    2019年8月3日からユジク阿佐ヶ谷で期間限定上映されますよ!

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