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【レポート】新文芸坐シネマテークvol.3「クレール・ドゥニ 植民地行政官の娘」第二夜『35杯のラムショット』に行ってきました!

      2017/09/11


 さて、先週に引き続き「新文芸坐シネマテーク vol.3」の第二夜に行ってきましたよ。クレール・ドゥニ監督特集です。今夜は長編第9作の『35杯のラムショット』(2008年)が上映されました。日本国内で上映されるのは、2012年11月の横浜シネクラブ以来、2回目だとのこと。小津安二郎監督の『晩春』にオマージュを捧げた作品ということで、情緒豊かな物語でした。

 もちろん、今回も訳者でもある大寺眞輔さんの講義付き!

 前回に引き続き、満員御礼立ち見ありの素晴らしいイベントでしたね。大寺さん曰く、「近年まれに見る盛り上がり方」とのこと。この盛況ぶりだと次回開催も期待できそう!噂では、次回も素晴らしい作品が控えているようですよ!



 ちなみに、前回(2015年3月6日)参加した時レポートはこちら↓

大寺眞輔さん講義覚書

 今回の講義はあまり紹介されていないであろうインタビューや資料からの引用が多かったです。

例によってメモとってなかったのでうろ覚えの箇条書きです >_<

■登場人物はグレゴワール・コラン(as ノエ)を除いて全員がカリブ系の黒人だが、それが彼らのアイデンティティになっているわけではない。みんながフランス人。

■主人公であるリオネル(アレックス・デスカス)の周りを黒人で固めたのは、「政治的正しさ」に対する反発から。

■アレックス・デスカス(as リオネル)は前回(『パリ、18区、夜』)のテオの数年後を演じているかのよう。

■日本への言及が随所に見られる。逆さまになった塩の看板(ノエの部屋)や炊飯器に貼られたサッポロ一番のシールなど。父と娘の関係をめぐる物語で、小津安二郎の『晩春』へのオマージュであり、またドゥニが母へ捧げた作品でもある。

■小津映画のオマージュ作品を作ることについてはドゥニ自身の中で迷いがあったが、トロント国際映画祭で偶然目にした侯孝賢監督の『珈琲時光』に勇気をもらい、制作に取り組んだ。

■この作品は長編第9作にあたるが、第10作の『ホワイトマテリアル』(2009年)と同時期に制作。『ホワイトマテリアル』はいわゆる大作映画だが、『35杯のラムショット』はドゥニが片手間に作った作品ではなく、入念に準備を重ねた上での待望の作品。

■物語は小津へのオマージュだが、カメラワークは小津的ではなく、むしろドゥニ的で、アグネス・ゴダールが担当。

■制作のタイミングとしてはアレックス・デスカスがリオネルという人間を演じるにふさわしい年齢に達したこと、そして作品を捧げる母親の余命を勘案してとのこと。

■作品で描かれる父娘の関係はドゥニの母と祖父との関係で、祖父はブラジルの出身。

■作品の随所に、父娘の関係性を象徴するものが登場する。ラストの2つの炊飯器など。

■4人が雨の中出かけるコンサートはプリンスの設定で、その後入ったバーで流れる曲はコモドアーズの「ナイトシフト」。

■(行けなかった)コンサートの翌朝、バーから帰るのはノエ、ジョゼフィーヌ、ガブリエルの3人だけ。リオネルはバーの女主人と寝てる。

■「35杯のラムショット」というジンクスは、特にそういうものがあるわけではなく、監督がこの映画のために作ったもの。35という数字もなにか意味があるわけではない。

『35杯のラムショット』

 オープニングが列車の運転席から見た流れる景色で始まるんですよね。そういえば、『パリ、18区、夜』もカテリーナ・ゴルベワの運転する東欧のオンボロ車を後ろから追いかけるように撮ったカットから。このシーンでかかっているメインテーマの旋律がもう素晴らしくてですね…。

 このオープニングの視線が誰のものなのかが後半になっていくとわかっていくんですが、まさに「寄り添うような視点」ですね。リオネル(アレックス・デスカス)が帰宅してからの模様を丹念に写しとる様も美しい。この父が自宅に帰ってくるときに玄関のブザーを鳴らして入ってくるんですが、食事の用意をしていたジョゼフィーヌ(マティ・ディオプ)がフッと笑みを浮かべるところに、二人の関係性が現れているようでよかったですね。

 淡々としている上に、説明というものが全くと言っていいほど省かれているので、少しとっつきにくい面もあります。物語の序盤でノエ(グレゴワール・コラン)がリオネル父娘の部屋を覗きこんでいる場面があるんですが、見てる方は彼の正体がこの時点では全くわからないので、不審者かと思ったりもしたり(笑) だんだんと物語が進んでいくうちに彼らの関係性が顕に、そして濃厚になっていくのが面白かったですね。最近のだと深田晃司監督の『ほとりの朔子』を見ているような感覚でした。

 色々と見どころはあるんですが、旅に出たノエの部屋に窓を閉めにやってきたリオネルが他人の部屋のソファに大股開きで座って不遜にも屁をひる場面とか、3人が立ったまま飯をかき込む場面はなんだか可笑しくもあると同時に、ドゥニの柔らかな視線を感じられる場面でもありますね。それから、「ナイトシフト」が印象的なバーでのダンスのシーン。様々な人々の思惑が視線のかたちをとって絡み合い、そして父親が一人の男に役割を移譲していく…。そして、一人明らかに不機嫌な顔をしているガブリエル(ニコール・ドーグ)(笑)

 いわゆるバンリューものではありますが、暴力もないし言い争いみたいなものも無く。だけれども悲惨な場面がないわけでもなく…。そういった意味で、私が一番気になった登場人物はリオネルの同僚のルネさん(Julieth Mars-Toussaint)だったりします。リオネルの脇でかつての職場に立つ彼の横顔がとても印象的で。「開放された気分だよ」「終わりは終わりだ」、とかいちいち言葉が重たいのも…。そういえば、物語はルネの退職から始まり、若者たちの結婚で幕を下ろすわけですが、もしかしたら最後に「35杯のラムショット」をキメるリオネルもまた、ひと仕事終えた開放感があったんじゃないかなあ、などと思ったりもします。あ、あと大寺さんも言っていたけど、一番最後のカット、2つの炊飯器が並ぶ場面、あえてリオネルの顔なんか出さないところ、本当に素敵でした。

予告編

基本情報

35杯のラムショット  35 Rhums100 min

監督:クレール・ドゥニ

音楽:スチュアート・ステープルズ/デヴィッド・ボウルター

脚本:クレール・ドゥニ/ジャン・ポール・ファルゴー

撮影:アニエス・ゴダール

出演:アレックス・デスカス/マティ・ディオプ/ニコール・ドーグ/グレゴワール・コラン/



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イベント概要

イベント名新文芸坐シネマテークVol.3 「クレール・ドゥニ 植民地行政官の娘」第二夜
日時2015年3月13日19:30 - 22:30
会場新文芸坐
料金一般:1,300円 前売・会員:1,100円

 - 映画イベント

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