久しぶりに新文芸坐シネマテークに参加してきました。今回はイタリアの巨匠エルマンノ・オルミの初期三部作特集です。第一夜は処女長編である『時は止まりぬ』(Il tempo si è fermato/1958年)。個人的に初オルミです。物語の筋自体は全く難解では無いのですが、上映後の大寺先生の講義があると面白さ倍増というシネマテークらしいシネマテークでした!

大寺眞輔さん講義覚書

雑なメモです。

オルミについて

■業界の中心であるローマから距離をおいた作家

■社会主義者であり、鉄道員からエディソン・ボルタ(電力会社)社員になった父の影響が大きい。

■エディソン・ボルタに事務員として就職し、映画サークルを立ち上げる。40本以上の企業PR映画を撮影し評判は上々。

■『時は止まりぬ』『就職』の時点ではまだエディソン・ボルタ社員。

■初期の3本はドキュメンタリータッチ、ネオリアリズム的な青春映画

■日本での受容:フランス映画社を通じて『木靴の樹』が配給され、ヒット。

■大寺さんは『木靴の樹』をデートムービーとして観に行く。「映画芸術」のハスミンによるオルミ評を読んで予習。最初の「ハスミ体験」!

■蓮實さんによると:オルミは単数的(単線的、シンプル、リリカル)

『時は止まりぬ』について

■当初は、ダムで働いている労働者たちが冬の間どのように過ごしているかというドキュメンタリータッチの企業PR映画だったが、次第にフィクショナルな要素が多くなる。

■ドキュメンタリー的要素:①舞台となったのは、アダメッロ山地(Adamello)の実際にあるダム。 ②二人の労働者(ナターレ、ロベルト)は職業俳優ではなく実際の労働者。本名。

■お互いの名前を聞かないような微妙な距離感が、ロベルト(若者)の感覚とシンクロしていく。

■恋人のような距離感が面白い。

■日常の機械的な行動を発見していくロベルト。大の字になる。日常のスペクトル化がこの映画の面白さ。

■音の工夫:ドアの開閉、きしみなどの強調が感性を刺激する。ブレッソン的だが、ブレッソンよりはリアリズム。

■日常の反復→時計を再び動かすという象徴的動作。

■ナターレの日常の中にロベルトが闖入する。

■セーターのシーンが良い。合わせている。言葉ではない部分、ビジュアルで二人の関係を示す。

■後半にある対立関係:①人間と自然(吹雪) ②人間と宗教(教会) ③人間と歴史(山岳パルチザン、教会のシャンデリア)

■伝統的なドラマツルギーに頼らない物語。ガチガチに作られた作品だが、あたかもドキュメンタリーのようにも見える。

オルミという作家について

■ネオリアリズム的だが、マージナルな人々ではなく、困難さの中で生きようとする人々を描く。

■普通の人々の普通の生活を描く。

■明確な終わりがない。

■実際の場所で撮影している。

■非職業的な俳優を重視している。

『時は止まりぬ』

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