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【映画レビュー】『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-02 暗黒奇譚!蛇女の怪』:38歳無職童貞ストーカーおじさんがんばれ!

      2017/09/10


38歳無職童貞ストーカーおじさんが美少女のためにミミズを食らう!

 この映画を一言で言うなら、まさにこの節のタイトルそのものといってもいいかもしれない。38歳無職童貞の櫻井(水澤紳吾)は山を徘徊中に謎の美少女・つぐ巳(桑名里瑛)と出会う。思わず彼女に一目惚れしてしまった櫻井は彼女の家を突き止めるが、そこには白石作品でお馴染みのキ○ガイおばさん(正木佐和)と二人で暮らすつぐ巳の姿があった…。

 投稿ビデオが物語の端緒になるのはいつも通りなのだけど、今回のそれはとにかく長い!先に言ってしまうと全体で92分なのに40分くらいある。ストーカーらしく、断られようがとにかく何回でも行く。時間帯とか関係ねえ。やっと投稿ビデオパートが終わりかと思いきやまた行く(笑)劇場でも「また行くのかよ!」という声が思わず上がるほど。だからこの映画の主役は櫻井さんだと言ってもいい。まあ彼が撮影しているのでほとんど画面には映らないわけだけれども。演ずるのは水澤紳吾。最近だと『ぼっちゃん』で主演を張っていたけれど、個人的には「SR サイタマノラッパー」シリーズのMCトムが印象に残っていて、今回もあんな感じの味のある演技を見せてくれる。

 そしてこの投稿ビデオのクライマックスは、おっさんが頑張ってミミズを頬張るシーン!ちなみにここでのミミズはいわゆる「霊体ミミズ」ではなく、普通のミミズである。予想通りの情けなさで、「最終章」の田代カメラマンを彷彿とさせるのだけど、このピュアなイメージがラストの衝撃的な場面の相似形になっている。

工藤Dによるスパルタ恋愛指南がてきとうすぎてひどい

 今回の依頼自体は「つぐ巳をキチ○イの母親から救って欲しい」というものなのだけど、なぜか工藤Dは櫻井の恋愛相談だと意気込むのが面白い。その前の投稿ビデオパートで映る櫻井は典型的なコミュ障のそれなので、工藤Dとは完全に水と油のような組み合わせ。

 で、肝心の中身はというと予想通り、「当たって砕けろ」的なテイストのアドバイスというよりはもはや命令に近いもので、一言で言ってしまえば「雑」。工藤Dはパワー系のオッサンだからそれでいいのかもしれないけど。ただ、「お前自身の言葉で伝えなきゃ意味が無いんだ!」という工藤Dのセリフは、ありきたりな言葉に見えてしまうが、工藤Dがこのセリフを言うところに意味があるし、とても熱いものがある。

 ただ、この工藤Dのおせっかいとも言える暑苦しい適当な恋愛指南があるものの、今回はコワすぎ!メンバーがあまり活躍しない。前述のように投稿ビデオは40分もあるし、あくまでも櫻井とつぐ巳を中心にして物語が進んでいく。つぐ巳の母親という「敵」のようなものがいるとはいえ、彼女を殺したり引き離したりすれば呪いがとけるというわけでもないということが次第にわかってくる。物語の終盤は白石作品らしく、カオスの渦巻くラストに突き進んでいく様が実に楽しい。アグレッシブに怪異に立ち向かうというよりはそれに翻弄され、ただ傍観者となるしかない工藤・市川・田代の面々。特に、終盤の蛇女に襲われるシーンなどは、例によって瞬間移動を多用しつつも、突如現出するヘビ的な動きにはかなり驚かされる。そして結末は前シリーズでの妖怪ものである「FILE-03 人喰い河童伝説」を思わせるなんとも歯切れの悪い幕切れ。見ようによってはハッピーエンドともバッドエンドとも受けとれるところに「コワすぎ!」らしさが滲み出ている。

現代版異類婚姻譚としての「コワすぎ!」

 いつものような「コワすぎ!」として見ることができる一方で、ラブストーリーとしても上手く成立しているのも本作の見どころの一つだ。ともすればただのストーカーの話なのだが、蛇女というオカルト的要素によって純愛物語へと昇華させられている。マイナス×マイナスはプラスなのだ。

 人が「人ならざるモノ」と婚姻を結ぶ「異類婚姻譚」は世界各地に見られる説話形式の一つだが、本作はその中でも人間の男が蛇の化身と契を結ぶ「蛇女房」譚のヴァリアントの一つと言ってもいいだろう。働き者の純朴な男をニートのストーカーに、蛇の化身を過保護でキチガ○の母親と暮らす現代的な美少女へと置き換えた「現代版・蛇女房」だ。

 基となった説話においては、2人は婚姻を結ぶが、男が「鶴の恩返し」などにもみられる「見るなのタブー」を犯すことで別離してしまう。蛇の化身は子どもに舐めさせるために自らの片目を置いていくものの、男が何らかの理由によってそれを失うことで、もう片方の目も差し出し、盲目となる。ネタバレになってしまうので、結末は詳しく述べないが、元の物語のエッセンスを抽出しつつ、ほとんど真逆とも言える展開をたどるのが面白い。カメラを片手に「見るなのタブー」を積極的に犯していく櫻井は、むしろそれによってつぐ巳に近づいていくし、犠牲を払うのも櫻井自身だ。古典の「蛇女房」が女性に一方的に犠牲を強いる物語であったのと対照的なのも、どこか現代的だ。果たして、38歳無職童貞ニートストーカーおじさんの恋は成就するのか。工藤Dの怒声とつぐ巳の誘惑が渦巻くクライマックスで櫻井が下す決断とその行為は衝撃的だが、同時に純朴なラブストーリーとしてのハッピーエンドでもある。

予告編

基本情報

戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-02 暗黒奇譚!蛇女の怪  92 min

監督:白石晃士

脚本:白石晃士

撮影:白石晃士

出演:大迫茂生/久保山智夏/白石晃士/桑名里瑛/正木佐和/水澤紳吾

上映開始日:2015年7月11日

公式サイトhttp://www.albatros-film.com/movie/cho-kowasugi/

公式Twitterhttps://twitter.com/kowasugi_movie

舞台挨拶ありました!

 この前のFILE-01(恐怖降臨!コックリさん)の時は公開初日だったので、なんとなく舞台挨拶あるかなーとは予想してんたんですが、なんと公開3日目の平日にもかかわらず白石監督の舞台挨拶がありました!「超コワすぎ!非公式報告書」(手作りパンフ)の製本をしていたとか(笑) というわけで、舞台挨拶覚書です。

・スピンオフ①(「Rest」)で工藤Dを電話ボックスで待ってる女の子は「超コワすぎ!file-01」に出てた投稿者の純(松竹史桜)です。工藤のファンだって言ったから引っかかっちゃったんでしょうねー。他の二人は…倉本さん(紅甘)はあんな感じだから乗りこなせないだろうし、もう一人の松田さん(寺内絵美子)もファンだって言ってたけど、なんだかんだいってかわしたんでしょうねー。

・スピンオフ①(「Rest」)のエピソードは監督の友達の知人の知人の某人が実際にやっていた話。

・スピンオフ②(「Please」)で途中から家に入ってくるキ○ガイのおばさんは○○さんのお母さんです。…ということは?という風になるように作ってます。まだ具体的な今後の展開は考えてないんですが。市川の部屋も見せたんで今後出てくるかもしれませんね。

・「超コワすぎ!」シリーズは工藤が前作のような因果にとらわれていないのでハイテンションです。そこについていけたら楽しめるかと思います。

・Q:「ニコニコ生放送」のエピソードはスピンオフの後の話ですか?→A:そうですね。工藤さんはまだ精神病院に入ってますね。

・Q:file-03は来年以降になるって本当ですか?→A:来年の4月くらいまで「コワすぎ!」以外の仕事で埋まってしまっていて、早くても撮影開始が7月から8月、完成するのが年末あたり、上映が春くらいになりそう。これは一番早いパターンで他に仕事が入ったらもっと遅くなるかもしれない。撮りたいという気持ちはある。今一番心配しているのが、AD市川役の久保山さんが若手ADっぽく見えなくなってしまうこと。それを考えると早く撮らなくては、と思います。

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