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過去の残滓との対峙
【映画レビュー】『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』

      2017/09/11


 とにかく、キャップことキャプテンアメリカ(クリス・エヴァンス)のアクションに酔いしれる映画。ご存知のように、キャップの唯一の武器は超硬い盾だけなので、超単調な戦闘になるかとおもいきや、この盾がアクセントとして味を出しているのだ。投げる→刺さる→取りに行くの一連の流れが美しい。一見するとただの軍人なのに、なぜかキャップと互角に戦える謎のおっさんとか、エレベーター内での大乱戦とか、シールドの戦闘機との鮮やかな戦いっぷりとか、キャップの活躍だけでもみどころが多すぎる。そしてもちろん、本作の敵役「ウィンター・ソルジャー」との壮絶な死闘もみどころの一つであり、特に中盤のナイフでの対決は素晴らしいの一言。
 あとはフィーリー長官(サミュエル・L・ジャクソン)が大量のパトカーに追跡されてフルボッコにされる序盤のシーンは不穏な空気を吹き飛ばすような空気の読めない人工知能のおかげで(?)コミカルな場面になっているし、後半のサムの空中戦も面白い。まあ、ただ飛んでるだけだが。(ブラックウィドウは忘れた)

 これらのアクションシーンだけでもお腹いっぱいなのだが、アクションと並んで軸となるのが、濃厚なポリティカルサスペンス。少しネタバレになってしまうけれど、「本当の敵は中にいる」というのは、アメリカという大きな組織の名を背負い、組織の一員として戦う「キャプテン・アメリカ」というヒーローへのある種の問いかけである。誰が味方で、誰が敵なのか?一人ではないからこそ生まれる安心感と不安感。これはそのまま、現代のアメリカ人がアメリカという国家に抱いている感情と相通じるものがある。巨大になりすぎた組織はその内部に双頭のヘビを生む、とは劇中のある人物の言葉だが、これが後半の「潜在的テロリストを自動的に抹殺するすごい機械」への布石にもなっていて、一気に話はシールドという狭い世界から全世界の問題へと移っていく。

 とまあ、単体でも十分楽しめる作品ではあるのだけれど、やはり前作である『キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー』を見ておかないと若干楽しみが削がれてしまう面は否めない。というのは、この作品は「過去を巡る」物語だからだ。前作を見た人であればもちろん承知のことだと思うけれど、キャップは50年以上前の人間である。彼を過去から切り離された人間としてその孤独さを強調することも出来たのだろうけれど、そんなキャップの前に、次から次へと過去のものが立ち現れてくる。当時の仲間達はみんな死んでるかと思いきや、ペギー(ヘイリー・アトウェル)はかろうじて存命だし、そもそも、キャップのいるシールドもWW2から綿々と続く組織である。そのシールドからの逃亡劇の中でキャップとナターシャ(スカーレット・ヨハンソン)はシールド発祥の地に行き着く。そしてそこに待ち受けていた6万メートルの磁気テープ!このシーンは前作を見ていた人であれば、まさかのあの人再登場で大興奮のはず(私は大興奮でした)。

 そして、この過去と現代が交差していく物語のなかで重要な立ち位置を占めている謎の暗殺者ウィンター・ソルジャー。彼もまた亡霊のように蘇った人物である。そんな「過去の残滓」とも言うべき存在に立ち向かうキャップもまた、過去に囚われている。懐かしき「あの時代」の衣装を身に纏い巨大なハイテクの塊であるヘリキャリアの中での最後の決闘。果たして、彼は過去を振りきることができるのか。ひとつ言えるのは過去は常につきまというということだ。副題である「ウィンター・ソルジャー」がベトナム帰還兵たちが戦後行った告白集会のことであることを踏まえると、この物語がひたすらに過去を主題としたものであったのもとてもしっくりくるし、その影から現代のアメリカの姿がうっすらと浮かび上がってくるのだ。

予告編

基本情報

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー  Captain America: The Winter Soldier136 min

監督:アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ

音楽:ヘンリー・ジャックマン

脚本:クリストファー・マルクス/スティーブン・マクフィーリー

撮影:トレント・オパロック

出演:クリス・エバンス/スカーレット・ヨハンソン/セバスチャン・スタン/アンソニー・マッキー/コビー・スマルダース/フランク・グリロ/エミリー・バンキャンプ/ヘイリー・アトウェル/ロバート・レッドフォード/サミュエル・L・ジャクソン/トビー・ジョーンズ

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