毎年恒例!年末の湯浅監督特集!去年は監督いらっしゃらなかったんですけど、まさか今年2本も長編やられるとはー。そりゃ来れないですよねー。今回はチケット前売り完売の満席でした!

 前回の「新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol.98 岩浪音響監督 ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! ドミネーターサウンド!!!」のレポートはこちら!

トークショー


!notice!

トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。

登壇者

湯浅政明監督(新文芸坐おなじみ。以下「」)

小黒祐一郎さん(アニメスタイル編集長、司会。以下「」))

新文芸坐・花俟さんによる前説

花 こんばんわ、新文芸坐の花俟です。アニメスタイルオールナイト99回目です。次回の内容まだ決まってません!湯浅監督、去年は忙しくて当館に来ていただけなかったんですけど、それは今年の大躍進のためでした。

忙しすぎて友達をなくした湯浅監督。。

小 今日は若いですね。『MIND GAME』初めて観る人もいますよ。初めて観る人ー(結構上がる)。やっぱり今日は若いですね。

湯 今日(長編)3本やるって聞いてたんですけど、みんな似てますよね。

小 そういえば、先月久々に休みにしたんですけど、なんでかわかりますか?99回を湯浅監督特集でやりたかったんです!

小 今年は湯浅さんが長編2本公開ということで、こんなことはアニメ史上初めてですよ!

湯 柴山さん1が年2本やってる年ありますね…。

小 あー、『ドラえもん』と何かですね2。1月になっちゃうけど「デビルマン」3もありますね。2本の長編と1本のTVシリーズを納品した、と。

湯 忙しすぎて友達を無くしてます。。

馴染みやすいように作った「ルーのうた」と「夜は短し」

小 『MIND GAME』が初めての本格監督作品でしたね。いまでもギトギトした作品ですけど、振り返ってどうですか。

湯 「自分が面白いと思うものが面白い!」と思って素直に作ってました。でも公開すると色々な反応がありましたね。

小 ものすごい熱量の作品ですよね。

湯 原作がすごいですからね。がんばってやりました。

小 今日初めて観る人はびっくりする表現があると思います。予告編にも出てるけど、キャラの顔が実写になる。

湯 『MIND GAME』は絵柄がコロコロ変わる、いろんな手法でやってます。
 ネットの批評サイトでこき下ろされたのがショックでした。それでテレビを3本4本やって再び映画に戻ってきた感じです。

小 「ルー」と「夜は短し」は口当たりの良い作品ですね。

湯 それは意識してますね。あまり斬新なことはやらずに、馴染みやすいように。でもそれも逆効果だったのかな…。あれに似てるとか…。あまり気にしてなかったけど、マイナスだったんだって…。

小 Blu-rayの特典のインタビューすごいですよ(笑)「監督のジブリ愛を感じます!」とか言ってて(会場爆笑)

キャラクターにぴったりだった星野さん

小 「夜は短し」の方は大人向けですね。

湯 原作もお酒を飲み歩くという、珍しいですけど、ちょっと大人向けのファンタジーですね。

小 キャスティングについてですけど、「ルーのうた」のカイ君役はオーディションで決まったんですか。

湯 いろんな人がいたんですけど、下田くん4の生の叫び声に敵う人がいなくて決まりました。

小 ルー役の谷さん5は…。

湯 可愛らしいけどしっかりした演技で、メインの中では一番大人でした。プロフェッショナルでしたね。

小 お父さん役の人は柔道家の人なんですよね。

湯 みんな知ってますよね、篠原さん6。本当に面白い人。加工しちゃえばいいかと思ってたけど、オーディションで聞いてみたら、「あ、いけるじゃん」ということであまり加工してません。

小 あんまりアニメ声優を使われてないんですよね。

湯 ちょいちょいタレントさんを入れてますね。

小 わん魚役の新谷さん7、あまり台詞ないけど、「あ、声優だ!」という感じでした。

湯 声優がいいとか俳優がいいとというのはないんですけど、良ければという感じですね。

小 『夜は短し歩けよ乙女』の方も面白いキャスティングですよね。主役の星野さん8は?

湯 キャスティング会議で星野さんの名前が出た時に知ってたので、「あ、星野さん!」と食いついたら決まりました。キャラクターもぴったりでしたし。星野さんも『MIND GAME』を観てて好きだったみたいで。忙しい中でなんとか入れてもらいました。

小 『夜は短し歩けよ乙女』といえば花澤香菜さん9ですよ!素晴らしかった!

湯 主役ですからね!乙女がまず魅力的でないと。ほぼパーフェクトでした。

小 花澤さんはオーディションあったんですか。

湯 参考テープみたいの聞いてすぐ決まりました。

小 神谷さん10も良かったですね。

湯 彼も部分的に加工しようと思ってたんですけど( あの場面ですね!)、そのままで上手くいきました。

小 『夜は短し歩けよ乙女』の方はいわゆるアニメ声優とそうでない方が一緒にやってるんですね。

湯 僕の方はあまり考えていないんですけど…。うまくハマる人がいればという。ロッチさん11は前から気になっていて、入ってもらいました12。「四畳半」の時、飛行クラブの部長がロッチの中岡さんに似てて、ほんわかの人もコカドさんに似てたりしててやってもらいたいと思ってたんです。

小 アフレコはどうでした?

湯 神谷さんが早口に難儀してて、「だから早口は嫌いなんだ」と言ってました。「四畳半」のオーディションで落としたから根に持ってて(笑)

小 『夜は短し歩けよ乙女』はコンテが4パートに分かれてますよね。

湯 冬は大平さん13とウニョンさん14にやってもらってます。

小 春と秋は湯浅さん?

湯 そうですね。

小 美術は海外の人が入られてますね。

湯 前にサルにインターンで来てた人がたまたま吉祥寺に住んでて手伝ってもらいました。

(アニメーター関連の面白い話があったけどメモできませんでした!)

もっと手応え欲しかった

小 『夜は短し歩けよ乙女』と『夜明け告げるルーのうた』を作って手応えはどうでした?

湯 思ったよりなかったですね…。賞とかももらったけどもっとヒットしてほしかった。「デビルマン」もたくさん観て欲しいですね。

小 「デビルマン」、3話まで観ましたけどかなりギトギトしててよかったですよ!

湯 全話上映とかして欲しいですね。

小 今後の夢はどんなのがあるんですか。

湯 のんびりと仕事ができればいいと思います。今年は忙しかったので。仕事があるのはいいことなんですけど、多少疲れてます。昨日まで4、5日休んでましたけど。

小 数年前は仕事無かったんですか?

湯 干されるっていう状態ですかね…。なかなかうまく行かなくて、それに比べればいいですね。

小 どういう作品が作りたいとかあります?

湯 思いっきり子供向けの作品とか作ってみたいですね。自分で作りたいと思っている企画もあるのでいつか実現してほしいですね。

小 テレビと映画はどちらがいいですか?

湯 テレビも意外と作りやすいですけど、じっくりしっかり創るのはやっぱり映画ですね。人集めが大変ですね。スタッフが全然集まらない。はっきり決まらないうちに押さえられちゃう。

小 「夜は短し」と「ルーのうた」は人材が豊富な状態ではなかったんですか?

湯 「ルーのうた」も最初の方は全然人がいなかった。当初から少人数でやることを考えてましたけど、そこで人が欠けちゃうと代わりの人を探すのが大変でした。

小 2作品で大活躍している大平さんはどんな人ですか?

湯 びっくりする画を描く人ですね。規格外。大平くんはできるだけ大きい絵を描きたいと言って、畳みたいな大きさのコンテを描いたりして。で知識もすごくあって、建物とか植物とか。あと動きも上手い。リアルな面とか、描こうとする意志がすごくてびっくりしましたね。

小 で、この2作では大平くんに活躍してもらった?

湯 どちらも大平くん向きじゃないかな…と思ったけどやってもらいました。規格外だから大変なんですよ。規格の中に入ろうとしないし(笑)でも大事なのは演出意図を理解してやってくれてるということですよ。

小 「ルーのうた」くらい大平さんを活用できてる作品はないですよ!

湯 カットたくさん描いてますね。

小 クリエイターとしての湯浅さんはこんな画を描きたいってのはありますか?

湯 自分の画、古いなーって思ってるんですよ。自分で描くより人に描いてもらいたい。

小 『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』15の湯浅さんパートはモロ出しですよね。

湯 キャラ表に合わせてるんですけど、やっぱり癖は出ちゃいますね。

 

小 最後にお客さんに楽しんでってください的なコメントお願いします。

湯 じゃあ、「楽しんでってください」(会場笑)

上映作品

[cf_cinema post_id=8076 format=3 text=” ついにこの前Blu-ray買っちゃったんですけど、やっぱ新文芸坐の大画面は映えるな〜。『MIND GAME』と同じ方向性の「ギトギトした」作品ですね。これくらい個性爆発している湯浅監督のほうが好きかも。OPから好きすぎる。湯浅監督もそうだけど、三原三千夫さんのキャラデザ・作監に色が出まくってて最高ー!ネトフリあたりが金出して1クールくらいのシリーズやってくれないですかね…。”]

[cf_cinema post_id=8069 format=3 text=” 今年の話題作だったのに観れてなかったのでうれし〜。普通に大傑作ですね。全然○ニョと違うじゃん!死の香りがしないですよね。むしろ再生がテーマですよね。歌を踊りと海に覆われて町と人々が生まれ変わっていく。作画(動きの意味の)がすごくいいよね。トークでも触れられてるけど、大平さんの担当したパートがもう何回でも観られるくらい素晴らしい。砂浜のダンスの場面とか、テンションバリ上がりますね。あとルーのパパが燃えながら町中を駆け抜けていくとこのあのダイナミズムとスピード感!細かいとこだと、カイ君の目が歯車になってオープニング入るとこが好きすぎるなー。”]

[cf_cinema post_id=8071 format=3 text=” ロードショーで観たときにはなんかピンと来なかったんだけど、他の湯浅作品と並べてみるとこれはこれでありかなと思いました。ていうか普通に面白いですね。前観た時はどうしても『四畳半神話大系』と比較してしまって…。星野さんも大ファンなんだけど、やっぱり浅沼晋太郎さんの早口がねーあまりにも印象的だったもので…。森見先生の書くボンクラ男子大学生、どれも気持ち悪くて魅力的なんですけど、今回の主役の乙女がまーいーですよねー。あの飄々とした感じ。一番好きなパートは秋の学園祭。緋鯉背負った乙女かわい〜。「偏屈王」のあの非現実感ある舞台もいい。原作と比べてアニメの方は表現がファンタジックになってる印象。これくらいの飛躍がある方が湯浅監督らしいよね。李白さんの電車とかさ。あ、あと最後の締めのアジカン!最高!”]

[cf_cinema post_id=4306 format=3 text=” 毎年恒例!年一回大画面で観たいよねー。あ、ちなみにこないだのクラウドファウンディングでBlu-rayゲットしました!湯浅監督観たことない人に一本だけ勧めるならやっぱりコレっすねー。小黒さんは「ギトギトしてる」って表現してたけど、この狂ったようなテンションと作画、湯浅監督でしか表現できないっすよね。自分も最初に観た時はいきなり実写になるのビビりましたー。何回も観てるんで、まあ寝ててもいいかーと考えていたのですが、逆に寝れない…!カーチェイスのシーンが好きなんですけど、特に最後の脱出シーンが何回観ても見入ってしまうんすよねー。まだあるのか!っていう。こうして毎年上映されてファンがどんどん増えていくといいなあ。”]

写真など

まとめ

 99回に恒例の湯浅監督特集でしたが、満員満席のいい上映会でした。来年は『DEVILMAN crybaby』一挙上映+『MIND GAME』が来ると予想(ネトフリだから厳しいかな…)。
さあ、次回はついに第100回!


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関連リンク

■新文芸坐 http://www.shin-bungeiza.com/

■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/

NOTES

  1. 芝山努(1941年3月9日-)。シンエイから亜細亜堂。「映画ドラえもん」シリーズの監督で有名。個人的には『映画ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』(2004年)が好き。
  2. ちょっと調べたけど1988年の『映画ドラえもん のび太のパラレル西遊記』と『県立海空高校野球部員山下たろーくん』(短編35分)、1990年の『映画ドラえもん のび太とアニマル惑星』『ちびまる子ちゃん』がありますね。90年の方は『おじさん改造講座』(オムニバスアニメーション)も監督やられてますね。
  3. 『DEVILMAN crybaby』。全10話、Netflix独占配信!
  4. 下田翔大(2002年7月9日-)。え!まだ15歳なの???若い!!
  5. 谷花音(2004年5月4日-)。
  6. 篠原信一(1973年1月23日-)。柔道家でタレント。直近だと2000年のシドニーオリンピックで銀メダル。
  7. 新谷真弓(1975年11月6日-)。『フリクリ』のハル子さんっすね〜。
  8. 星野源(1981年1月28日-)。「逃げ恥」で売れたあとにこの映画の話があったからすごいタイミングだった…。
  9. 花澤香菜(1989年2月25日-)。なんか最近あまり見ないな…。
  10. 神谷浩史(1975年1月28日-)。「進撃」のリヴァイ兵長の人。
  11. 中岡創一とコカドケンタロウのコンビ。ワタナベエンターテインメント所属。
  12. 中岡さんは詭弁論部OBの高坂さん、コカドさんは学園祭事務副局長とオウム役。
  13. 大平晋也(1966年-)。独特の動きが特徴的なベテランアニメーター。
  14. チェ・ウニョン(EunYoung Choi、최은영)。サイエンスSARUの取締役でもあるアニメーター。湯浅さんといえばこの人って感じですね。『スペース☆ダンディ』第9話「植物だって生きてるじゃんよ」が思い出深い…。
  15. 『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』(1992年、監督:須田裕美子/芝山努)。名作。