おなじみのボンズナイトですが、今回は『ストレンヂア 無皇刃譚』の10周年記念。&アクションアニメ特集!ボンズと言えばクオリティの高いアクションアニメですからねー。そして、毎年恒例だったのに去年は何故かなかったハロウィンと言えば!『COWBOY BEBOP 天国の扉』!いやー、盛り上がりました!

 前回の「新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol.94 アニメファンなら観ておきたい200本 原恵一監督のアニメーション映画」のレポートはこちら!

トークショー


!notice!

トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。

登壇者

南雅彦プロデューサー(ボンズの代表取締役の名物プロデューサー。結構イベントとかで見る人。以下「」)

安藤真裕監督(今日のメインである『ストレンヂア 無皇刃譚』の監督。あんなぷる出身のアクションが得意なアニメーターの人。以下「」)

小黒祐一郎さん(アニメスタイル編集長、司会。以下「」))

中村豊1さんが客席に!

新文芸坐・花俟さんによる前説

花 (いきなりビバップが流れる)流れましたねえ!(会場拍手)  何はともあれ「ストレンヂア」10周年おめでとうございます!アニメスタイル100回も近づいてきました。100回を超えると小黒さんが別の形態になるようですよ(会場笑)

今日は中村豊ナイトだ!

南 ほぼ満席ですね。

小 しかも女性が多いですよ。アクションアニメナイトなのに。

南 中村豊はいるかー?あ、いた!

安 今日はゲストで出てきてくれたら「中村豊ナイト」になりましたね。あまり人前には出てきてくれないから…。

小 このふわふわしたノリで50分持つとは思えないですね…。

(恒例のどの作品が観られているか挙手タイム)

南 「シャンバラ」が結構観られてますね。

小 「鋼」を観に来たけど「ストレンヂア」も観られるという…。あ、もしかして今日、中村豊のアクションを見に来た人?(たくさん手が挙がる)今日はそういう日だったんだ!

南 中村さんあってのボンズですからね。

安 今やってる「ヒロアカ」2でもカット数は少ないけどいいところ取っていくんですよね~。

南 去年の「モブサイコ」3でもね。

安藤「ストレンヂアは歪なものを目指した」

小 じゃあ上映作品について古いところから…。今日は安藤さんナイトでもあるわけですね。上映する3作品、原画だったりなにかで関わっているという。

安 そうですね。フリーで関わっていました。

小 南さん的には安藤さんの印象は?

南 上手い原画さんだなあと。

小 (安藤監督に)中村さんの下で働いてどうでした?

安 「ビバップ」(天国の扉)の時だったんで、参加できるだけで申し訳ないなあという感じでした。中村さん、めちゃくちゃ気を使ってくれるんで…。笑顔が素敵で。でも目は笑ってないんですよね。

小 (安藤さんは)後半のアクションシーンのさらに後半の部分をやってるんですよね。

安 中村さんのボディアクションのいいところを観て楽しめると思います。

小 ボンズにとって「天国の扉」はどういう作品ですか?

南 TVシリーズはサンライズ(制作)だったんですけど、いろいろあってボンズを設立しまして…製作はサンライズだけど作ったのはうちです(笑)

小 ボンズさんはアクション多いですよね。

南 アクションものしか来ないんですよねえ…。

小 参加されてるアニメーターの方もアクション物が得意なんですか?

南 どっちが先かはわからないけど、そういう人が多いですね。今はやってるなんとかフレンズ?ああいうのは苦手ですね(会場笑)

小 「ホスト部」4の時に花瓶が落ちるカットがあってあそこがアクションだったのかーーて(笑)(「ストレンヂア」は)南さんの方から安藤さんの方に監督の話があったんですか?

南 原画が上手い人だったんですけど、演出やってみたいということで色々やってもらってたんだけど、そのあとで代理店の方から「ストレンヂア」の企画が来て、そこから…。

小 南さん的にも「ストレンヂア」の監督としては考えていたんですか?

南 そうですね。当時、「鋼の錬金術師」の一期5があってたいそう儲かりまして、好きなものを作ってみようということになりまして。

小 ストイックな作品ですよね。

安 僕はパイロットフィルム観てどうしようかな、これで長編はやばいなって思ってしまいましたね(笑) 想像以上に地味だな~~って。今だったらまだ妖怪を出せるぞ。監督の僕が「妖怪出したいんですよね」って言えば出せるぞってほんのちょっと迷いました。でも妖怪出しちゃうと、すでに(同じジャンルで他社の)大きなものがあったんで、パイロットフィルムよりは派手なものでやってみようと。

南 勝算はありましたよ。高山さん6に脚本頼んだら、各キャラクターがとても生き生きしていたのでこれはいけるぞ、と思ってました。でも最初は女性の一人もいませんでしたね。

安 南さんに「派手なのと地味なの、どっちがいいですか」と聞いたら「うーん、派手かな…」ということで、ああなりました。

南 (今日)観てない人が半分くらいいるんですよね…。

安 それでも地味だなと思うかもしれないですけど、あれでも派手にしたんです。

小 「東京国際アニメフェア」でパイロット観た時、どうするんだろう、これ?と思いました(笑)

小 アニメーターの人の見せ場を作る形で作っていった感じですか?

安 「ストレンヂア」はアクションをドラマの中で消化してアクションを見せつつドラマもみせるフィルムを目指しました。アニメーションはどうしても最後は総力戦になってしまうんですけど、最後も一人の人にたっぷり作ってもらいたかった。自分の作ったステージで中村豊さんに歌ってもらいたかった!

南 中村さんのパートだけちょっと毛色が違いますよね。

安 今の中村さんがあそこをやるとキャラクターが浮いてしまうかもしれないですね。

小 公開時のインタビューで安藤さんは「歪な作品になってしまった」7とおっしゃってましたけど、覚えてます?

安 歪な感じを出したかったんですよ。それは作っているときから意識してました。

小 南さん的にはどうでしたか?

南 歪でしたね。「ストレンヂア」で良かったのは、キャラクターの感情だけはぶれないんですよね。アクションは個々のアニメーターが自由に作ってるんだけど。最後のアクションは完成するまでわけがわからなかった(笑)

安 僕は一応監督なんでわかってましたよ(会場笑)

南 できあがったらバッチリ!この場面こんなに広かったんだ!って。

安 DVDで観た人が映画館で観たいな、と思うような作品を作りたくて、どうしたらいいかずっと考えてました。だから今日はとても嬉しいです。

テレビ放送後3ヶ月での公開

小 「シャンバラ」の話を伺いたいんですけど、テレビの「鋼」が終わってから一年経たずに公開してるんですけど…。

南 昔はそんなもんじゃないですか?代理店の方からはあまり(テレビ放送から)離れないでほしいという要請があって、放送が終わった3ヶ月後に公開できないか、と言われて(会場笑) テレビ作りながらコンテとかにはすでに入っていました。

小 コンテはやってみてどうでしたか?

安 本当は監督が全部やるのが良かったと思うんですけど、時間がないということで、シナリオをコンテに起こしていく作業をしていました。

小 水島監督が手を入れやすいように?

安 なるだけシナリオ通りにやって、水島監督が修正しやすいようにやりました。

南 會川昇さん8の脚本はほんとに緻密なんですよね。いろいろ詰め込んであるし。アクションシーンも多いし。で中村さんのパートも入れなきゃいけないし。

ロボットもキャラクターだ

小 そういえば3Dの話が出ましたけど、ボンズさんは手描きにこだわっていく感じなんですか?

南 そうですね!(会場拍手)今度の「エウレカ」9のメカも手描きです!(会場拍手)

小 どういったところがいいんでしょうか?

南 例えば、「鉄人28号」10という鼻の高いロボットがいるんですけど、敵の手にある時はやっぱり表情とか動きも変わらないといけないし、一つのキャラクターだと思うんですよね。もちろん、逃げれるところは逃げてますけど。がんばります!

安 ここ数年の中村さんの仕事もCGを使わずにどうやって戦っていくかを模索している感じがしますね。

新文芸坐は「ストレンヂア映え」する劇場だ!

小 今後のボンズですけど。

南 とりあえず「エウレカ」が3本あります。

小 3本もあるんですね。

南 一本目がこけたら怒られそう。新しい機体も出ます。あと『文豪ストレイドッグス』の完全新作があります。めちゃくちゃ気合入ってます。作打ち11のときに誰も座らないという事件がありました(笑)来年に向けて制作中。

小 劇場版中心にやっていくんですか?

南 去年、『君の名は。』がヒットしたから、会社のほうがやっぱ劇場でしょって…。テレビも「ヒロアカ」とか「モブサイコ」とかやってます。来年の10月で20周年なので20年はがんばろう!と(会場笑)

安 また映画やりたいなということで地道に活動してます。今日も帰って仕事します。新文芸坐さんは普通のロードショーよりも大きいスクリーンで、音響もね、「ストレンヂア映え」しますよ!

南 今日見てもらう3本はアクションアニメということもありますけど、それぞれいろいろなテーマとか思いとかが詰まった作品で、ボンズのターニングポイントとなった作品でもありますので、楽しんでいただければと思います。「ストレンヂア」は9月で10週年なので9月にまたなにかできればと思います。

上映作品

[cf_cinema post_id=6507 format=3 text=” 前に見たのも新文芸坐×アニメスタイルセレクションのオールナイトでしたが、痛烈な衝撃を受けた作品です。冒頭の山賊との戦闘からしてもうすごい! 弓矢ってこんなに威力あるんだ…という感想を初めて抱いたアニメでもあります。後半の将藍たちが砦になだれ込むあたりもう最高ですね!「え、お前ここで死ぬん???」みたいのがいくつもあって。敵も味方もバッタバッタと死んでいく。死に様コレクションみたいな側面がいい。もちろん、名無しと羅狼の決戦も、あの息詰まるやりとり、アニメじゃないと表現できないかのような凄まじさがありますよね。一方で、トークでも触れてましたけど、話自体は比較的地味なんだけど、主人公の仔太郎と飛丸(犬)というかわいいものコンビが物語の推進力であり軸でもあるので全然飽きない。逆に名無しだけだったらエラい地味なことになってた気がしますね(笑) “]

[cf_cinema post_id=6505 format=3 text=” 公開時にも衝撃を受けた映画ですが、実のところ2017年の今見るとすごくしっくりくるんですよ。それは何かというと、脚本の會川昇さんの手がけた『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』が去年放送されたから。合わせて観ると通底するテーマが浮かんできて非常に面白いです。(ベルリンの)アルが言う「僕たちはあなたの夢の中の存在なんかじゃない」なんてセリフ、ちょっとすごいですよね。挙句の果てに向こう側の世界を捨てて現実世界で生きていくことを決意するくだりなんて、こう言っちゃなんですけど、『鋼の錬金術師』というコンテンツの枠を飛び越えた作品になってしまっていると思います。そして、この文脈で私が連想したのはSF作家ジョン・スコルジーの傑作メタSF『レッド・スーツ』。自分たちが物語の登場人物であることに気づいてしまった人々の物語です。アクションアニメとして観るなら、トークでも言ってましたけどなぜかVSグラトニー戦がクライマックスだったりします笑 すごくゴリゴリ動いて好きですけど。”]

[cf_cinema post_id=6538 format=3 text=” 去年はなぜかハロウィンにやらなかった「天国の扉」。何回観ても面白いと言ってしまっては陳腐ですが、冒頭のコンビニ強盗のくだりから引き込まれますね。カレーとシチューの話のどうでもよさとか(笑) そして悪役史上に名を残したと言っても過言ではない、ヴィンセントのなんとも言えない色気。一見、ただの髭のおっさんなのになー。最後の決闘もそりゃいいんですけど、個人的にはモノレール車内の戦いが好きですね。一年に一回観たくなる映画です。”]

写真など

まとめ

 アクションアニメメインだとやはり眠らないので良いということを再確認。どれも一回は観ている映画ですけど、やはり2回目3回目でも新たな発見や気付きがあるものですね。ボンズナイト、来年のラインナップも楽しみです! 個人的にはテレビシリーズから力の入った回をまとめて見れると嬉しいなー。「ヒロアカ」とか『モブサイコ100』とか『ワンパンマン』とか。


[cf_event]

関連リンク

■新文芸坐 http://www.shin-bungeiza.com/

■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/

NOTES

  1. 中村豊(1967年12月22日-)。ボンズのアクション作画と言えばやはりこの人!
  2. 『僕のヒーローアカデミア』(2016-17年)。現在絶賛放送中!(2017年8月1日現在)ボンズらしいアクションたっぷりの安定した作品ですね。
  3. 『モブサイコ100』(2016年)。これも作画アニメとして話題になりましたねー。良かった。
  4. 『桜蘭高校ホスト部』(2006年)。そういえばボンズで10年くらい前なんですね。懐かしー。
  5. 『鋼の錬金術師』(2003年)。今日の「シャンバラを征く者」につながる話。
  6. 高山文彦(1953年-)。「ポケ戦」(『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』)の監督として有名かな。
  7. 「安藤 そうですねえ、ちょっと「やりすぎたかな」って思いましたね(笑)。かなり歪なフィルムになったというのもあるんですけれど、まあ初監督だから、歪でもいいかなって。」(「『ストレンヂア』安藤真裕監督インタビュー第4回 たとえ何があっても、必ずフィルムにする(WEBアニメスタイル_特別企画)」http://www.style.fm/as/13_special/mini_071002a.shtml)より引用。
  8. 會川昇(1965年8月9日-)。最近だと『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』ですかね。脚本家の人。
  9. 『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』。2017年9月16日から公開予定の三部作完全新作。
  10. 別にここで書く必要ないよね。
  11. 作画打ち合わせ