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【映画レビュー】『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』

      2017/05/28

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 昔からつねづね不思議だったのは『アルプスの少女ハイジ』に出てくるアルムおんじのことだ。ハイジと出会って10分くらいで即堕ちするこのやさしいおじいちゃんが、かつてはスイスの傭兵として戦場に立っていた姿がどうしても想像できないのだ。

 「血煙の石川五エ門」の敵役であるホークはそんなアルムおんじにそっくりの大男。ハイジを彷彿とさせる少女とのやりとりをアバンタイトルに持ってくるあたり、スタッフは完全に狙っているとしか思えない。前作である「次元大介の墓標」のライバルであったヤエル奥崎が狡猾な知的キャラだったのに対して、今回は完全なる脳筋野郎。二丁の手斧でグイグイと押してくる。これに対峙するのが純日本人サムライの五エ門という組み合わせの妙がまた面白い。得物のリーチも素早さも圧倒的に五エ門有利だと思いきや、初見の戦いで一方的に押される姿に驚かされるのだ。

 ホークというキャラクターの魅了はこの映画の面白さを支えているが、その戦闘スタイルは一言で言えば「粗雑」。とにかく距離を詰めて二丁の手斧でぶっ叩く。五エ門との初戦闘で斬鉄剣の鍔をガンガン叩いて壊していくという非常識さにも笑ってしまうのだけど(この時の五エ門の狼狽した表情が実に良い)、バイクでルパンのアジトに突っ込んでくるわ、次元の至近距離での銃撃を(手斧で!)弾き返すわとやりたい放題。動体視力もいい上にめちゃくちゃ頑丈というチートキャラで、中盤のカーチェイスでバイクから放り出されて20メートルくらいの崖下に落ちていくシーンがあるのだけど、「(どうせ生きてるんだろうなだろうな)」と思ったらやっぱり何事も無かったかのように立ち上がるのであった(笑)なるほど、アルムおんじの傭兵時代もこんな感じだったのだな、ということがよくわかる。おまけに仕事終わりには実に美味そうに肉をモリモリ食べる!(そういえばヤエル奥崎も美味そうに肉を食べていた)

 そして、このチートアメリカン野郎に対抗するための五エ門の修行がまた壮絶。文字通り身を削いでいて、それがクライマックスの対決への布石ともなっている。この決戦の場面も実に素晴らしくて、手斧だけで廃寺を解体していくホーク、相対する傷だらけの五エ門、そして逃げ惑うルパンと次元(笑)思わず生ハムを連想してしまう一閃の決着は頭から離れない。

 ところで、この作品、次元がヤクザの用心棒として登場し、ヤクザ映画さながらの内部抗争が描かれるのも面白いのだけど、それとは別に随所にあらわれる繊細な表現も見どころの一つだ。例えば、冒頭のヤクザとの小競り合いでは、いつものようにバッサリと切断される拳銃から零れ落ちるバネやその他の微小な部品が丁寧に描かれるし、ホークとの邂逅の後に五エ門が斬鉄剣を仕立て直す場面なども解剖学的な正確さで美しく解けていく。ホークの大雑把なアクションや所々に挟まれるまんが映画的な動きとは対照的で、作品の奥深さを感じさせる。

 しかし、やはりこの映画の主役はホークである。「素早いデブはめっちゃ強い」。このことを心にしっかりと刻んでいきたい。

予告編

基本情報

LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門  54 min

監督:小池健

音楽:ジェイムス下地

脚本:高橋悠也

出演:栗田貫一/小林清志/浪川大輔/沢城みゆき/山寺宏一/土師孝也/菅生隆之/宮内敦士/江川央生/天田益男

公式サイトhttp://goemon-ishikawa.com/

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