おひるねラジーズ

毎日を、楽しく生きる

*


【レポート】新文芸坐シネマテークvol.11「エルマンノ・オルミ 青春トリロジー」第一夜『時は止まりぬ』

      2016/09/29

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 久しぶりに新文芸坐シネマテークに参加してきました。今回はイタリアの巨匠エルマンノ・オルミの初期三部作特集です。第一夜は処女長編である『時は止まりぬ』(Il tempo si è fermato/1958年)。個人的に初オルミです。物語の筋自体は全く難解では無いのですが、上映後の大寺先生の講義があると面白さ倍増というシネマテークらしいシネマテークでした!

大寺眞輔さん講義覚書

雑なメモです。

オルミについて

■業界の中心であるローマから距離をおいた作家

■社会主義者であり、鉄道員からエディソン・ボルタ(電力会社)社員になった父の影響が大きい。

■エディソン・ボルタに事務員として就職し、映画サークルを立ち上げる。40本以上の企業PR映画を撮影し評判は上々。

■『時は止まりぬ』『就職』の時点ではまだエディソン・ボルタ社員。

■初期の3本はドキュメンタリータッチ、ネオリアリズム的な青春映画

■日本での受容:フランス映画社を通じて『木靴の樹』が配給され、ヒット。

■大寺さんは『木靴の樹』をデートムービーとして観に行く。「映画芸術」のハスミンによるオルミ評を読んで予習。最初の「ハスミ体験」!

■蓮實さんによると:オルミは単数的(単線的、シンプル、リリカル)

『時は止まりぬ』について

■当初は、ダムで働いている労働者たちが冬の間どのように過ごしているかというドキュメンタリータッチの企業PR映画だったが、次第にフィクショナルな要素が多くなる。

■ドキュメンタリー的要素:①舞台となったのは、アダメッロ山地(Adamello)の実際にあるダム。 ②二人の労働者(ナターレ、ロベルト)は職業俳優ではなく実際の労働者。本名。

■お互いの名前を聞かないような微妙な距離感が、ロベルト(若者)の感覚とシンクロしていく。

■恋人のような距離感が面白い。

■日常の機械的な行動を発見していくロベルト。大の字になる。日常のスペクトル化がこの映画の面白さ。

■音の工夫:ドアの開閉、きしみなどの強調が感性を刺激する。ブレッソン的だが、ブレッソンよりはリアリズム。

■日常の反復→時計を再び動かすという象徴的動作。

■ナターレの日常の中にロベルトが闖入する。

■セーターのシーンが良い。合わせている。言葉ではない部分、ビジュアルで二人の関係を示す。

■後半にある対立関係:①人間と自然(吹雪) ②人間と宗教(教会) ③人間と歴史(山岳パルチザン、教会のシャンデリア)

■伝統的なドラマツルギーに頼らない物語。ガチガチに作られた作品だが、あたかもドキュメンタリーのようにも見える。

オルミという作家について

■ネオリアリズム的だが、マージナルな人々ではなく、困難さの中で生きようとする人々を描く。

■普通の人々の普通の生活を描く。

■明確な終わりがない。

■実際の場所で撮影している。

■非職業的な俳優を重視している。

『時は止まりぬ』

 冬の山小屋で世代の違う2人の男が一夜を過ごすという非常にシンプルな映画にもかからわず、なんかわからないけど面白い!講義でも述べられていましたけど、序盤のナターレ(ナターレ・ロッシ)が見せる日常の所作が淡々としている反面、すごく映画的であったりして引き込まれます。そしてそこから非日常を体現したかのようなロベルトが現れて、山小屋でのささやかな世代間抗争(笑)と和解というストーリー。

 中盤に描かれるこの二人のせせこましい小競り合いが実に面白いのです。お互いの読んでいる本をこっそりと盗み見てみたりする場面とか、ロベルトが「R」とデカデカと刺繍されたダサセーターを着てくれば、翌朝のナターレは鹿の絵のセーター(かわいい!)を着こむといった具合。徐々にお互いを理解していくといったお決まりの展開ですが、夜に起こった吹雪をきっかけに急接近!とこう書くと恋愛映画のようだ…。でもそういう雰囲気はありますよね。ホモセクシャルとまではいかないまでも。

 ハッと目を引く演出やカットが多いも印象的でした。講義でも触れられてましたけど、雪の上にロベルトが大の字に倒れこむシーンはやっぱりすごいシーンだと思います。あと、序盤のナターレが一人で家事をしているシーン、電球が画面のこちら側にぶら下がっていて、ナターレが奥にいるという構図なのですが、ふと彼の背中に電球が丸い影を落とす!さりげないけどすごいシーン。さり気なさで言えば、教会に避難した二人の場面で、雪の中に枕を落としてきてしまったロベルト(ボンクラ感がかわいい)を見て、何も言わず自分の枕を二人で使うナターレがもう最高ですね。しかも横ではなくて縦に使うというこの距離感の表現!天才すぎる…。

 ところで翌朝山小屋に戻る二人のシーン、電気が戻ったのを見てロベルトが「ますます良いぞ!」というセリフを発するのですが、大寺先生のこの訳出、雰囲気が出ていてとても印象深いです。

予告編

基本情報

時は止まりぬ  Il tempo si è fermato83 min

監督:エルマンノ・オルミ

音楽:ピエール・エミリオ・バッシ

脚本:エルマンノ・オルミ

撮影:カルロ・ベレロ

出演:ナターレ・ロッシ/ロベルト・セベソ

イベント概要

イベント名新文芸坐シネマテークvol.11「エルマンノ・オルミ 青春トリロジー」第一夜『時は止まりぬ』
日時2016年9月1日(木)19:30 - 22:15
会場新文芸坐
料金一般:1,300円 会員・前売:1,100円

関連リンク

感動はスクリーンから – 低料金2本立ての名画座 | 新文芸坐

IndieTokyo

 - 映画イベントレポート